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第133話 柚の母 ①
DV被害者が逃げ込める場所。
シェルター。
だが、ここにも長くはいられない。
シェルターの一室。
その部屋のベットで眠る柚の頬を、母は撫でた。
まだ幼く、ぷくぷくとした頬に小さな手。
長い睫毛に柔らかな髪がかかっていて、その髪をそっとはらった。
柚はもう5歳。
だけど、まだ5歳。
自分の命に変えてでも、守っていきたい柚のことを、私は守っていけるだろうか?
ずっと柚のそばで守り続けたい。
でも、それでは柚を食べさせていくことは出来ない。
今はシェルターに守られているけど、いずれかは出ていかないといけない…
柚を守っていきたい。
でも、守れる?
怯えず安心して暮らせて、
毎日お腹いっぱい食事ができる。
怪我や病気をしたら、すぐに病院に行けて、
学校にだって安心して通える。
そんな暮らしを今の私は柚にさせてあげられる?
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