131 / 194

第133話 柚の母 ①

DV被害者が逃げ込める場所。 シェルター。 だが、ここにも長くはいられない。   シェルターの一室。 その部屋のベットで眠る柚の頬を、母は撫でた。 まだ幼く、ぷくぷくとした頬に小さな手。 長い睫毛に柔らかな髪がかかっていて、その髪をそっとはらった。 柚はもう5歳。 だけど、まだ5歳。 自分の命に変えてでも、守っていきたい柚のことを、私は守っていけるだろうか? ずっと柚のそばで守り続けたい。 でも、それでは柚を食べさせていくことは出来ない。 今はシェルターに守られているけど、いずれかは出ていかないといけない… 柚を守っていきたい。 でも、守れる? 怯えず安心して暮らせて、 毎日お腹いっぱい食事ができる。 怪我や病気をしたら、すぐに病院に行けて、 学校にだって安心して通える。 そんな暮らしを今の私は柚にさせてあげられる?

ともだちにシェアしよう!