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第138話 突然の別れ ⑤

そして柚は訳もわからないまま、黒い服に着替えさせられ、 白い菊の花が飾られた施設に連れて行かれ、 いつもは笑顔溢れる清美が、柚を抱きしめながら涙を流す姿を見て、柚はこう思った。 どうしてみんな、泣いてるの? 「柚くん、お母さんにお別れをしよう…」 「お別れ?」 「そう、お別れ。できるかな?」 柚は院長に手を引かれ、清美と一緒に母親の棺の前にやってきた。 あ、お母さんだ。 棺の中で穏やかに眠っているような母親を見て、柚は 「先生、お母さんお空に行ったっていってたけど、ここで寝てるよ」 と、院長を見上げる。 「今は寝てるみたいだね。でもね、これからお空に行くんだよ」 「?起こしたらダメなの?お母さん起きたら、ぼくと一緒にいれるのに…」 「‼︎」 清美が息を飲むと、院長が柚と同じ目の高さまでしゃがむ。 「柚くん。お母さんはね、お空の神様のところに、今から行かないとダメなんだ。それでね、お空からずっと柚くんのことを見ていてくれて、守ってくれるんだよ」 「お母さん、神様のところに行っても、ぼくのこと、見ててくれるの?」 不安そうに柚が院長と清美、2人を見上げると、 「そうだよ。ずっと、ずーっと見守ってくれてるよ」 と、院長が微笑む。 「いまも?」 「今もだよ」 お母さん、ねちゃってるけど、ぼくのこと見ててくれるんだ。 「だったらぼく、お母さんに『頑張ったね』って言ってもらえるように、頑張る‼︎」 柚はいつものように笑うと、 「じゃあ先生達は、もっともーっと頑張らないとな」 という院長に柚は、きつくきつく抱きしめられた。

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