157 / 194
第159話 報告 ーー蒼sideーー
「蒼…、ちょっといいか?」
和臣が伊吹と蒼の家まで送り届けた時、蒼に声を掛けた。
多分柚のことだ。
「それだったら伊吹も…」
言いかけたが、
「俺だったら大丈夫。蒼だけで和臣さんと話ししてきてよ」
そう言って伊吹は家の中に入っていった。
「それで、伊吹くんには柚くんのこと、きちんと話したのか?」
責めたりするようなきつい口調ではなく、和臣の口調は優しい。
「話したよ。伊吹も今の状況はわかってくれてるみたいなんだけど、それでもちゃんと伝わったか心配で…」
蒼は少し目を伏せる。
「そう思うんだったら、これから伊吹くんが心配にならないようにしていくのが、蒼の役目だな」
和臣は優しく蒼の頭を撫でた。
「柚くんのことなんだが」
「はい」
柚に何か悪いことが起こっていないか心配だ。
「検査入院が必要で……」
和臣は経緯を話し始めた。
柚は今日、明日も検査入院することになり、その事も含め、保護者代わりの孝司に連絡しなくてはいけなかったこと。
はじめ柚は孝司にこの事が知られる事を嫌がり、それならば…と帰りたがったが、和臣と学の説得により、しぶしぶ孝司の連絡先を教えたこと。
その孝司は和臣、学、柚の思いとは正反対に、病院からの連絡を受け、すぐに病院に来、そして治療も『できる全てのことを願いしたい』と積極的だったこと。
「え?孝司さんは柚の治療、すんなり受け入れたんですか?」
「そうなんだ。受け入れたというより帰る寸前まで『今できる最善の治療を、お願いします』と念押しされたぐらいだ」
‼︎
そんな事が。
俺が想像していた答えと全く違う。
「今の段階では堀内氏がどう考えているかわからない。細心の注意をしておくが、この件は、一筋縄ではいかないかも…」
たしかに孝司さんの第一印象は、優しそうな人だった。
でも柚から聞く話は全く違っていて…
どっちの顔が本当なんだ?
「…。そうですか…。和臣兄さん、ありがとうございます。話は違うんですが、聞きたいことがあって…」
蒼は携帯のアルバムから2種類の薬の写真を、和臣に見せた。
ともだちにシェアしよう!