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第162話 箇条書き ② ーー蒼sideーー
「話が長くなりそうだから…」
と、ソファーに座る伊吹にホットミルクを渡し、蒼は自分には紅茶をローテーブルに置いた。
それから柚と再会してからの事を順を追って蒼は今見での経緯と、和臣との話を、伊吹に全て話した。
「それで、柚の体調は?」
あまりに蒼の話を真剣に聞いていた伊吹のホットミルクは、手付かずのまま冷えていっている。
「とりあえずは落ち着いてきてるみたいだけど………」
蒼はそこで一度言葉を切り、
「伊吹…」
隣に座る伊吹を抱きしめた。
「伊吹、体調は?」
伊吹が動くたび、本当に微量だが漂うフェロモンの香。
これは機械でも測定できないであろう、蒼だけがわかるほどの量。
蒼の鼻をくすぐる甘い香りは、蒼をラットにさせるほどではないが、それでもフェロモンが出ている事が蒼は不安で仕方なかった。
伊吹自身、このことにきがついているのだろうか?
「大丈夫。でもフェロモン出てるか、自分では分からなくて……。もし蒼に迷惑かけたら…」
やっぱり気が付いていない…
だから今まで伊吹からフェロモン出ていても、伊吹自身は自覚がなかったんだ…
「実は俺、伊吹からフェロモン出てるかも…って思ってたんだ」
「え?」
蒼の思わぬ告白に、伊吹は目を見開く。
「じゃあどうして言ってくれなかったの?」
素朴な疑問を伊吹は蒼に投げかける。
「俺の勘違いかと思ってた。伊吹はベータだからフェロモン出るはずないって…。でも後天性オメガだったなんて…」
アルファである俺が伊吹のそばにいるから、伊吹のフェロモンが反応しているのかも…
本当は一緒にいない方が伊吹のためなのかもしれない。
でもそんなこと…
そんなこと、俺は耐えられない。
もし、伊吹が俺のそばにいてくれると言ってくれたら…
俺はそばにいてもいいか?
「伊吹、そばにいてほしい」
抱きしめていた腕を蒼は緩め、伊吹の目を見つめた。
「え?それどういう……」
伊吹が言いかけた時、
「俺、抑制剤飲むの平気だから。量が増えても大丈夫。だから、そばにいて欲しい」
「…」
「伊吹からフェロモンが出だしたら、俺がちゃんと伊吹に伝えるし、伊吹には触れない。だから……、そばにいて欲しい」
お願いだ、伊吹。
『いい』と言ってくれ……
願い続けている蒼の胸は、不安で張り裂けそう。
お願いだ…伊吹…
「俺も一緒にいたいよ、蒼」
‼︎‼︎
伊吹が蒼に抱きつくと、蒼は伊吹のチョーカーに優しくキスをする。
よかった…
ありがとう、伊吹。
俺は一緒にいたいんだ。
伊吹が俺と一緒にいていいと思ってくれている間は……
「大好きだよ、伊吹……」
そう言って、伊吹の肩に頭を埋めた。
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