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第165話 新しい薬 ① ーー蒼sideーー
これか…
蒼は薬を飲むと、先ほどまであった欲望が驚くほど瞬時に消えていく。
ここまで効くとは。
でもよかった。
これでしばらくは大丈夫そうだ。
蒼がベットに戻ると、伊吹は蒼の枕をギュッと抱きしめながら眠っている。
その寝方、可愛すぎるけど、枕ないと寝れないから、ごめんね伊吹、返してね。
その枕をそ〜っと取ろうとすると、
「だめ〜」
寝言で怒りながら、枕を強く抱きしめる。
………。
それ、俺のなんですけど……
もう一度、蒼はそ〜っと取ろうとすると、今度はくるっと蒼に背を向け取られないようにする。
「……。伊吹、それ俺の枕。返して」
「…」
伊吹からの返事はない。
「それ、俺じゃなくて枕だよ。抱きしめるの、俺にしてみない?」
「やっ……」
それだけ寝言で言うと、またスヤスヤ眠り始めた。
俺今、枕に負けたよな……
蒼は仕方なくソファーからクッションを持ってきて、それを枕がわりにベットにはいるのであった。
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