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第180話 あなたの番になりたい ー伊吹sideー

カーテンの隙間から差し込む太陽の光で目覚めた伊吹が、そっと目を開けるとそこには安心して眠る蒼の姿が。 そして2人して何も纏わず裸。 そんな姿のまま伊吹は蒼に抱きしめられていて、 床を見ると、脱ぎ捨てられた2人の服が散らばっている。 これって… もしかして、蒼とH…したの? 伊吹はいくら思い出そうとしても、思い出せない。 どうして思い出せないの⁉︎ その時の記憶全てが欠如してしまった… そんな感覚に伊吹は陥っていた。 伊吹は蒼を起こさないように、そっとベットを抜け出そうとすると、 「…ん…。伊吹…?」 伊吹を逃さないというように、伊吹を抱きしめる蒼の腕に力が入る。 「おはよ。伊吹…」 無防備な笑顔で伊吹を見つめる蒼は、幸せが満ち溢れている。 「おはよ。…あの…、蒼…。昨日の事って…」 伊吹が言いかけると、 「あれって本当?伊吹……」 蒼に聞き返される。 「え?」 「ほら、昨日伊吹が『俺と番になりたい』って、言ってくれた事…」 !!!! 驚きで伊吹が息を呑む。 俺、そんな事言ったの⁉︎ 蒼の運命の人は柚くんなのに⁉︎ 伊吹の胸がキュッと苦しくなる。 「あれ、本当?本当にそう思ってくれてる?」 「…」 『蒼と番になりたい』 それは本当。 心の底からそう思う。 でも、それはできないじゃないか… 運命の人じゃないんだから… 蒼は運命の人と出会ってしまったんだから… 「俺、伊吹にそう言ってもらえて本当に嬉しかった。俺も伊吹と番になりたかったから…。もし、伊吹が俺を選んでくれたら、どんなに幸せか…って思ってたから…」 優しく微笑み、そして掌で伊吹の頬を包み込む。 「伊吹。ずっとそばにいて。改めて言うよ。俺と番になってください」 「‼︎‼︎」 伊吹の瞳から涙が溢れ出す。 諦めてたんだ。 どんなに俺が蒼の事が好きで、 どんなに一緒にいたいと思っても、それは束の間の話で、 ずっと一緒にはいられない。 必ず別れがくるって… 覚悟してたんだ。 だから、蒼の事、好きにならないよう努力もしてきた。 でも、できなかったんだ。 本当は苦しかったんだ。 毎日目が覚めて、 『もし、今日、蒼に別れを告げられたらどうしよう…』って… 『きちんと、さよならできるのかな…?』って… 本当にいいの?蒼… 俺、運命の人じゃないよ… だけど、本当にいいの? 「蒼、本当に…いいの…?俺、蒼の運命の人じゃないのに…」 口に出してしまうと、本当に苦しい。 もし蒼の気持ちが今後変わるかもしれないなら、今ここで別れを告げてほしい… 「何言ってるの?伊吹は俺の運命の人だよ。出会った時から」 本当に⁉︎ 信じて……いいんだよね……。 これを言ったら、もう後戻りはできない…… 「蒼。俺も蒼と番に…番になりたい…」 蒼が言ってくれた嬉しさと、もしもの時の覚悟が崩れてしまった不安の中、伊吹は蒼の胸に顔を埋めた。

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