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「すみません、ちょっと調子に乗りすぎました」  頬を人差し指でかきながら、誓はえへへと笑った。聖はというと、他人に洗浄シーンを間近で見られるという恥辱にも近い羞恥行為に、すっかりベッドに沈んでしまっている。 「……でも、聖さんもちょっと楽しんでました?」  その問いかけに、否定出来ないのがまたなんとも言えなかったりする。  誓の言う通りだった。いつも後ろを使った自慰をするときに淡々としている行為を、視線と言葉を投げられながらすることに、正直興奮してしまっていた。  とはいえ、まだ恥じらいは完全に捨てきれておらず、素直にうんとも返せない。シーツの波に顔をぐりぐりと埋めて、赤くなってしまった顔をどうにか隠す。  疲労感と緊張感でいっぱいになっている聖のすぐそばへ、誓が近付いてくる。俯せに寝ているベッドが、ぎしりと音を上げた。 「あまりのんびりしててもあれなんで、そろそろ始めていきたいんですけど……どうしましょうか、今ならまだ止められますよ」  煽りでもなく、ただただ純粋に心配してくれていることは明らかだった。  自分が恥ずかしがって、ずっと顔を隠しているから――  誓の優しさがなんだかむず痒く思えてしまう。でも、不思議と嫌ではない。声が聞こえた方へちらりと顔を向けると、聖は小さな声で呟いた。 「……大丈夫、です」 * * * 「苦しいとこないですか?」 「あっ、だいじょ、ぶ……っ」  いよいよ行為が始まると、聖は広いベッドの上で四つん這いの体勢をとらされた。後孔をじっくり解すために、という誓からの指示である。  最初はガチガチになりながら、指一本の挿入をなんとか許している程度だった。しかし、準備が進んでいくにつれて、聖の体はしっかり順応していった。  指三本が収まる頃には、猫が伸びをするように腰を反らして体をくねらせていた。上半身をベッドにぺたんとつけて、指を出し入れされながら尻を左右に振っている光景は、あまりにも淫らだった。 「経験ないって見ましたけど、まあまあ緩いですね」 「っ、んぁ、やっ」 「ふふ、今きゅうって締まりました。聖さん、わかりやすいですね」 「ぁ……なに、がっ」 「SM、羞恥、調教、あとは思い切りいじめてくれる人――でしたよね」 「……ンっ」 「提出してくれたカウンセリングシート何回も読んで、ちゃんと頭に叩き込んできたんですよ」 「や、あっ」 「聖さんはドMだから、さっきみたく意地悪な言葉で攻められた方が興奮しちゃうんですよね」 「や、ちがっ、あ……ッ」  シーツをくしゃりと両手で握り締めながら、首を左右に小さく振る聖を見下ろして、誓はふっと笑った。そして、後孔に挿入している方とは反対の手を尻たぶに置く。  ――パァンッ!! 「あぁぁ……ッ!」 「ほら、わかりやすい。スパンキングされて、アナルはきゅんきゅんしてるみたいですけど」  間髪入れずにさらに次の衝撃。右、左、右――と交互に尻たぶを打たれると、聖はわかりやすく啼いた。  特になんの拘束もしていない状態で、尻を隠さずにひたすら突き出し続ける聖の姿に、誓は笑いを抑えきれていない。  数発打っただけで赤みが出てきた尻たぶを撫で回してから、今度は前へと手を回していく。 「少しも萎えてませんね、お尻叩かれるの好き?」 「ぁ、あ……んっ……」 「聖さん、ちゃんと質問には答えましょうね」  ――パァンッ!! 「ッ!! ごめ、ごめんなさっ、ぁあっ」 「お尻叩かれるの、好きですか?」 「……すきっ、すきです……っ、きもち、いいっ」  聖が観念して本音を口にすると、誓はよく言えましたと優しく囁きかけた。それから、挿入しっぱなしになっていた指を抜き去ると、ぽっかり穴が空いてしまった後孔に顔を近付ける。 「……っひぃ!! あ、ン、えっ?」  指とは異なる熱を持っているなにかが後孔に入り込んできて、浅い部分をうねうねと動き回っている。今までに一度も経験したことがない刺激に、聖は混乱しつつも喘ぎ声を上げる。じゅるじゅるっと淫らな啜り音が聞こえてきて、後孔を舐められているのだとすぐに理解した。 「ごほうび、です」 「あっ、やあ゙っ……ちょっ、とっ、そんなとこ、なめないでっ」 「アナル舐め、NGに入れてなかったでしょう?」 「~~~あ゙あ゙っ♡」  聖の喘ぎ声が甘ったるいものへと変わった瞬間。すぐさまそれに気が付いた誓はくすっと笑ってから、舌先を尖らせて奥へ奥へと侵入を試みる。 「本当に未経験? すごく良さそうですけど」 「あ゙、ン゙ぁっ♡ や゙、ひっ……♡」 「でも、さすがに舌じゃ限界がありますね。聖さんのここもひくついてるし」 「あ゙ぁ゙……っ♡ や、あ゙……ッ♡」  舌でぐりぐりと刺激をしてから、話しながら後孔に向かって吐息を吹きかける。その度に後孔の皺がひくひくと震えた。それを何度も繰り返されていると、最初は刺激的だった舌の抜き差しが、だんだんと物足りなくなってきてしまう。  もっと、太くて熱いものを、いれてほしい――  聖の頭の中は、舌ではないもののことでいっぱいになっていった。しかし、素直にねだってもいいものかわからず、体をびくつかせながら快感の波に耐えていた。 「……なにか言いたいこと、ありますか?」 「ん゙ぁ゙……え、っ?」 「ここに、いれてほしいものがあるんじゃないですか?」  直後、聖の全身にぶわあっと熱が集中する。さまざまな感情に苛まれたが、それでも最終的に聖の中を占めたのは嬉しさだった。  ああ、素直にねだってもいいんだ。そう思って、安心したのだ。 「……誓くんの、ほしいっ」  シンプルに思いを口にしてから、もっと誓の興奮を駆り立てるようなおねだりが出来たのではと後悔する。しかし、それだけでも聖のとっての精一杯だった。  首を回して、誓の様子をうかがう。すると、優しい笑顔がそこにはあって、聖は心の底から安堵した。 「よく言えましたね」  柔らかな微笑みと、その姿とはギャップを感じさせる、まるで交尾のような交わりは聖の興奮を加速させた。

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