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「……本当にすみませんでした」  先程までの厭らしい空気とはうってかわって、挿入を中断し、聖に向かって誓は深々と頭を下げていた。  甥っ子の面倒を頻繁に見ていることもあり、教育番組を見る機会がそれなりにあって、聖のことを知っていたのだ。  そもそも、体操のお兄さんをやっている聖が好きで、担当を振られたときはかなりテンションが上がったのだということ。カウンセリングシートを何回も見直して、しっかりと満足してもらえるように事前にいろいろと準備をしていたのだが、肝心の職業欄に”自営業”で出されていることを見ていなかったこと。  誓はそれらをひとつずつ、丁寧に説明していった。 「いくら好きとはいっても、プライバシーの問題もありますし、体操のお兄さんであることに触れずにしないといけないところを……本当に申し訳ないです」  この件は上に報告させていただきますね、と言われたとき、聖は無意識のうちに慌ててしまった。誓がなにか、ペナルティーを課されるのではないかと心配になったのだ。それもあって、聖は咄嗟にフォローをするような言葉をかけていた。 「まあ、でも、最初から知ってたなら、そうなるよね……正体バレててあんな姿晒してたの、ちょっと恥ずかしいけど」 「もちろん、この件に関しては口外しませんし、あとはちょっと上の判断にもよるんですけど、なにか誓約書を――」 「誓くんが口外しないなら、大丈夫だよ。わざとじゃないんだし、そこまで気にしないで」 「……すみません、ありがとうございます」 「その、気持ちよかったのは事実、だし」  羞恥心でどうにかなりそうになりながらも、本心をそのように伝えると、誓がぱぁっと表情を明るくさせて笑った。 「実は聖お兄さんのこと昔から大好きで、応援してるって意味でも、男性としても。割と浮かれてたから、そうやって言われると、かなり、ヤバいです」  わずかに目を逸らして、恥ずかしそうに口を開いた誓のことを、不思議と可愛いと思ってしまう。  しかしすぐに、これも営業の一種かななんて、聖は笑い返しながらそんなことを考えていた。

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