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帰宅してすぐ、鞄や羽織りものを放り投げ、リビングのソファに寝転がる。
今週がまだ始まったばかりだというのに、聖はひどい倦怠感におそわれていた。
ついこの間までは、溜まった性欲を発散出来ないせいで不調だったわけだが、今回は逆に、誓との先日の行為の余韻によって悩まされてる。
さすがに業務時間中は、しっかり頭を切り替えてこなしていたが、こうしてプライベートな時間になると、どうしてもあのときのことを思い出してしまうのだ。
――正直なところ、誓との行為は最高だった。
* * *
「すみません、お待たせしました」
「あ、うん……おかえり、なさい」
「とりあえずですね――」
聖の職業がバレていたことにより、行為を中断したあの後のこと。
今回このような形で中断してしまったが、お客様と話し合って続きをするかどうかの話し合いをしてくるようにとのこと。また、本日についての勘定は発生しない。やり取りによって失った時間もあるため、たとえ延長したからといってその分の追加精算などもなし。
それが「こういう場合はどうすればいいか確認してきます」と真面目な顔で退室していった誓が、持ち帰ってきた答えだった。
「ということで、します? それとも、やめときましょうか?」
「そんなこと、言われたって……」
「お客様の意思が一番なので、聖さんにお任せしますよ――って言いたいところですけど」
「え?」
「正直言うと、俺はしたいです」
ストレートに本音をぶつけられると、聖は顔を背けてしまう。だって、そんな、したいって直球に言われたら、誰だって恥ずかしくてたまらない。
行為には用いていないひとりがけのソファに腰掛けながら、目の前に立って心配そうな表情を浮かべている誓をちらりと見上げる。そして少しだけ悩んでから、うんうんと小さく繰り返し頷いた。
「わか、った」
「本当に?」
「……ん」
恥ずかしさのあまり、再度視線を逸らして答えると、誓が軽く屈んで目線を合わせてくる。優しい微笑みを見せながら、聖の頬軽く口付けた。
いざ行為の再開が決定すると、今までの中断時間がなかったかのように、誓は聖をスマートにエスコートした。
ソファに座っていた聖の腕を引き、手の甲に軽く口付けをして、肩を抱き寄せながらベッドまで連れていった。
そこで、再び組み敷かれるかと思えばそうでもない。なぜか先に仰向けで寝転んでしまった誓が「おいで」と甘く囁くのだ。
なるほど、と思いつつ、聖は言われるがまま従った。横になった誓の下半身を跨いで、慎重に腰を落としていく。自分で挿れてとか、そういうことを言われたわけではない。まるでなにかに操られているかのように、不思議と体が勝手に動いてしまうのである。
その後、ふたりは濃密な時間を過ごした。騎乗位の体位で上下に動くように強要されたり、それが出来なくなると下から思い切り突き上げられたり。聖が何発か射精をして、体位を変えようとするときには、職業を理由に言葉で辱められた。「職業バレたって知ったとき、めちゃくちゃ締め付けてきたのわかりましたよ」と言って、体の柔らかさをプレイに組み込まれると、ありえないくらい感じてしまって恥ずかしくて仕方が無かった。
そのどれもが、聖にとっては興奮材料でしかなくて、強すぎる快楽の渦に、飲み込まれてしまうような感覚だった。
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