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「失礼しまーす」  前回とは違って、ノックもなしに扉が開かれたことに驚きつつ、そちらに顔を向けて、そこにいた人物の姿が視界に入ると、目を大きく見開いた。 「……えっ」 「聖さん、こんばんは」 「いや、あれ……んん?」  指名を外したのに、なぜか堂々と入室してきた誓に、聖は戸惑いと驚きを隠しきれない。 「俺が入ってきて驚きました?」  どこか恐怖を感じる爽やかな笑顔に、もろもろの事情をわかっていながら、きっとこの場に来たのだろうと考える。とにかく、怖くてたまらなかった。あとはふつうに気まずい。  聖の感情の大半を驚きが占めていたため、聖はこくりと頷き返した。  聖が腰掛けているソファに、じりじりと近寄ってくる誓から目を離すことも、体を動かすことも出来ない。バタンと扉が自然に閉まる音を耳に入れながら、有無を言わさない満面の笑みで、ゆっくり絨毯の上を歩く誓を見つめる。  なにか言わないと、いつまでも黙っているわけにはいかない。そう思って、聖の口から出た言葉が―― 「他の人を、指名させてもらった、んですが」  咄嗟に言ってしまってから、聖は一気に焦り始める。  あれ、やばい、これまずいこと言ったかも。 「はい、知ってますよ。過激にいじめてくれる人を指名したんですよね、前回は満足させてあげられなかったみたいで大変申し訳ないです。あ、他のスタッフみんな出払ってて俺が来たんですけど、別に俺がNGってわけじゃないですよね? ちゃんと、聖さんが希望してる過激なプレイにも対応出来ますからご安心くださいね」  相槌を挟むすきすら与えない、矢継ぎ早に語られる内容に圧倒されながらも、聖は自身の背筋が冷えていくのを感じていた。

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