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ひと通りの身支度を終えると、誓はタイマーをセットしながら言った。
「今ならキャンセル出来ると思いますけど、どうします?」
なにを今更と思ったが、背中を向けられていて誓の表情が確認出来ないため、本心を窺い知ることは出来ない。
率直に言うならば、とてつもなく気まずいし怖い。だからこそ、今日はキャンセルしてもいいのかもしれない。そんな風にも思った。しかし先程考えたように、今日が最後かもしれないと思えば、もう一度くらい誓と体を繋げておきたかった。思い出作りのようなものだ。
「……大丈夫。このまま、お願いしたい」
「そうですか、わかりました……じゃあまずは、そこに立って、さっきのソファの背もたれに手ついて待っててください」
部屋備え付きの、いろいろな器具が入っている木箱を開けながら、雑に指示を出してくる誓の言う通りに従う。
バスローブ姿で立ち上がり、静かにソファの後ろに移動すると、ソファに両手をつく。誓に対して背中を向ける状態になるため、首を回してちらりと背後を確認する。
「あ、バスローブは脱いで、全裸で立ってて」
前回に比べると、かなり素っ気なく冷たい口調だった。
ぴしゃりとした物言いにドキドキしながらも、聖は一切抗うことなく言いつけを守る。腰回りを結いていた紐を解くと、バスローブから腕を抜いていく。肩の上に乗っただけになった白いタオル生地を、すとんと床に落とした。
そして再び、ソファの背もたれに手をついて、静かに次の指示を待つ。
しばらく聞こえていたガサガサという物音がなくなると、木材の軋むような音が聞こえてくる。そして、誓の声がぐっと近付いてきた。
「お待たせしました、さあ始めましょうか」
「お願い、します……わっ」
突然、背後からぎゅっと抱きしめられて、聖の全身が跳ね上がる。
「あのね聖さん、俺ね、前回したときとかすごく気持ちよかったし、聖さんの可愛さにメロメロだったんです。でも、聖さんは物足りなかったんだよね? 過激なこと、もっともっとされたいんだもんね? 今日はいっぱい楽しませてあげますから、覚悟しててくださいね」
肩の上に顎を乗せられ、甘く優しい囁きが耳元で聞こえてくる。前回の情事を思い出させるような、そんな声色。
それだけでも聖の体は反応してしまう。ソファを掴む力が強くなったところで、誓の温もりが離れていった。
「返事は?」
パチン――っ!!!
「っ、い゙……!!」
突然、臀部に走った痛みに、聖の上半身はぐしゃりとつぶれる。
誓は聖の尻たぶを叩いたあと、今度は手のひらで優しく撫で回した。そして先程よりもぐっと体重をかけて聖に抱きつくと、耳穴に舌を這わせる。
「もう一回聞きますね。過激なこと、求めてきたんですよね?」
「……は、い゙ッ♡」
誓がどんな顔をしているか確認することは出来ない。ただ、その声色と尻を打たれただけでも、それなりの恐怖感が聖には植えつけられた。
「うん、ちゃんと返事出来ますね、えらいえらい。前回のNGワードも覚えてますよね、万が一のときは教えてください」
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