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 ――こんなの、ひどすぎる。  そう思いながらも、誓にされるがまま、ろくに抵抗もせずシアターの指定の位置に着席したのは聖自身だった。トイレの個室という狭い空間の中で、拒否する方法なんていくらでもあった。それなりの抵抗をして個室を出たり、逆に誓のことを追い出したり、体に取り付けられたもろもろを投げ捨てたり。しかし、聖はそれをしなかった。  結果的に、聖は着衣の下に、複数の玩具を仕込まれて、大きなスクリーンを眺めることになっていた。  胸元、両方の乳首は小さめのクリップで挟まれており、左右を繋ぐチェーンがだらんと弧を描いている。下半身にはコードレスのローターがふたつ。ひとつは後孔に挿入されており、もうひとつは陰茎の先端に括り付けられた。ご丁寧に、ローターがずれないよう、陰茎にコンドームを被せられている。多少動いても位置がずれない上に、万が一射精してしまったとしても、衣類を汚す心配がない――と誓は口にしていたが、聖は内心穏やかではない。  誓が予約していた座席は、最後列の中央の席だった。同じ列はおろか、前の何列かに人はいないため安心だが、まだまだ気は抜けない。  緊張感を抱きながら、上映開始を待っていると、隣に座っている誓の手が伸びてきて、聖の中心部を軽く握りこむ。 「あ、まだ勃ってますね」  こそこそっと耳打ちされて、聖は顔を赤く染めた。コンドームを被せるために、トイレの個室で誓に扱かれたのだ。  あれから萎えたかなと思って――と言われたが、そんなはずがなかった。扱かれたのもそうだし、体に玩具を取り付けられた状態でふつうの顔をして映画館の席についていることだったり、そのどれもが聖の興奮材料となっているのであった。 「どうします、今ならまだ間に合いますよ。トイレ行って体のそれ外したり、俺とのデートをやめて帰ることも出来ます」  本当に嫌なら、とっくに誓を突き飛ばしてそういった手段をとっているであろうことを、わかっているくせに。  そう思いながらも口には出さず、ぷいっと反対側を向く。そしてそのまま、聖が席を立つことはなかった。

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