25 / 36

4-2

 あまり浮かない程度に店内を移動し、辺りを見回してみる。多すぎず少なすぎず、この空間に適度な人の量。その全員が、受付で説明を受けた覆面の類を付けていた。聖と同様の顔全体をしっかり覆っているタイプのものから、口だけ出ているものや、逆に覆面の意味がないくらい露出しているもの、あとはダンスでも踊り出しそうなきらびやかな仮面まで、種類はさまざまだ。  店内にはセックスをしている人たち、それを遠目で眺めながらオナニーをしている人や、グラス片手にそれらを鑑賞しているだけの人。縄で縛られたり、鞭で叩かれている人までいる。ハプニングバーだから、そういう店であるということを理解してはいたが、実際に目にすると、それはそれで衝撃のようなものを受ける。  この場では、そういった行為をしていない人こそが少数で、店内をうろうろしている聖が逆に目立っているほどだった。さまよってばかりだと目を引くことがわかったので、聖は空間の隅の方、壁にもたれかかる。  ――これはなかなか、視覚的にも聴覚的にもやばい。だって、特にこういう系の映像で抜いてたわけだし。  さて、どうしようかと悩み始めたところで、聖は自らの下半身が反応していることに気が付いた。もともと性欲過多な方である。いやらしい映像を見ながら、抜いても抜いても物足りないという過去もあった。スマートフォンの画面を見るのでそれなのだから、実際に目の前でそんな光景が繰り広げられていたら、反応してしまっても仕方がないことだった。  人目につく場所での自慰行為には、ちょっとした願望のようなものもあった。ハプニングバーでなら、通報される心配だってない。今は、顔の一部分も見えない覆面をつけていて、身バレの心配もない。怖いことなんて、一つもなかった。  ――とりあえず、一回だけ、抜こう。  指先を陰茎に向かっておそるおそる伸ばしていく。下着に指をかけて僅かに下げると、完全に勃起している陰茎がぶるんと飛び出した。右手で竿を包み込みながら、人差し指で先端をぐりっと刺激すると、それだけでいつも以上の快感。  勝手に耳に入ってくるさまざまな音声や、店内の空気感、背徳的行為をしている自分自身をオカズに扱くこと数分。聖はあることに気が付いた。  ――あれ、もしかしてあの人、俺を見ながら扱いてるような……?  やや離れたところ、反対側の壁際にもたれている年配の男をちらりと盗み見る。男の視線は、確実に聖の下半身を向いていた。そして、男は下半身にやった手を素早く上下に動かしていた。  自分の姿をオカズに使われていると知ると、聖はドキドキして全身が熱くなった。誰かを興奮させている気持ちの高ぶりと、あとは覆面をしているから絶対にバレないだろうという安心感から、調子に乗って動きがだんだんエスカレートしていく。  壁にもたれかかって扱いているだけだったのに、下着を下ろして片足を抜いてしゃがみこむ。両膝を曲げて大きく開き、壁に背中を預けて床に片手をついてバランスを取りながら下半身を大きく突き出すと、続けて陰茎を扱きながら自身をアピールする。  冷静になって考えてみると、なんて大胆なことをしてしまっているんだろうと聖は思った。しかし、覆面という小道具が、聖を開放的にさせていた。  遠目で俺を眺めながら抜いていた男が、聖の側へ近付いてくる。近すぎず遠すぎず、適度な距離感で立ち止まると、すぐ目の前でまたオナニーを再開した。成人男性二人が向かい合って自慰をしている行為に、どことなく恐怖もあったが、ありがたいことに、男は手を伸ばしてこない。一歩離れた位置から、自身をシコシコ慰め続けているだけだった。  なんの面識もない男が、自分をオカズに抜いているのだと思うと、なぜだか気分が良かった。そして調子に乗った聖は、パンパンに膨らんだ睾丸を揺らして、ひくつくアナルを見せつけるように、腰をへこへこ動かし始める。

ともだちにシェアしよう!