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「お兄ちゃん、普段から後ろもいじってるのか?」  ずっと黙々と対面で自慰しているだけだったのに、声をかけられたのはそのときが初めてだった。恥ずかしがりながらも聖が小さく頷くと、男が笑いながら乱暴な口調で返してくる。 「そうだよな、割れ目がくっきりしてるもんな。ほら、人に見られてる前でいつもみたいに穴ほじってみろよ」  ガマン汁をだらだらにこぼしている陰茎から手を離して、言葉で誘導されるまま指先を後ろへと移動させていく。  来店前に解してあったアナルをつんつんと指先でつついてから、中指をゆっくり押し込んでいく。あっという間に指の付け根まで中に侵入すると、頭上から感嘆の声が降ってきた。その反応にすら興奮してしまった聖は、入れたばかりの中指を抜いてから、人差し指を添えて挿入し直していく。簡単に二本も飲み込んでしまう後孔に、嘲笑うような言葉をかけられると、きゅうきゅうとアナルが収縮した。 「ひくついてるのが丸見えだな、使い込んでるけつまんこずぼずぼしながらもっと声出せよ」 「……あっ♡」  楽しげな声と共に、自身を扱くことをやめた男の手が聖の体に伸びてくる。男のカサついた指先によって素肌を撫でられた瞬間、ぞわぞわと謎の寒気に襲われた。 「ひ、ぃっ」 「体触られてるだけで感じてんのか」 「……や、っ」  聖の反応に、男は気を良くしながら再び笑った。しかし、聖は感じているわけではなく、寧ろその逆だった。  見られているときは、自身の姿に興奮してもらえることに自らも興奮し、気持ち良くなっていたが、実際に触れられると気持ち悪くて仕方がない。  ――誓に触れられたときは、こんな風になったことなんて一度もなかったのに。  つい先程まで調子に乗ってやっていた、公開オナニーの手が止まる。自分の淫らな姿をオカズにされることに興奮していたはずなのに、平然とやっていたことが突然出来なくなってしまって困惑した。淫らな言葉をかけられて、気分も高潮していたはずだったのに、興奮が一気に冷めていく。 「手止めんなよ」 「いや、あ、えっと、その、すみません……っ」  どうしていいかわからず、聖はおろおろと慌て始める。  目の前の相手に謝って、とりあえずどこか別の場所に――と考えている間に、男がぐっと距離をつめてきて、聖の陰茎を握り込んだ。 「ほら、アナニー再開しろよ。こっちは俺が代わりに可愛がってやるからよ」 「や、あ……ッ」 「ちんぽとけつまんこ、両方弄んの気持ちいいのか? お兄ちゃん、ど変態で可愛いな」 「あ、お゙っ……んっ♡」  嫌でたまらないはずなのに、悲しいことに体は正直で、自然と喘ぎ声が漏れてしまう。しかし、背筋がぞわぞわとして、男から触れられることへの嫌悪感は変わらない。  いっそ、一度男を満足させた方が、大きなトラブルなく終えることが出来るかもしれない。ほんの少しだけ、我慢をすればいいだろうか。たとえば、今触れているのが誓だったら――そんな想像をした途端に、寒気のようなものが消えていく。 「ぐっしょぐしょじゃねえかよ。そんなにど変態なら、最初から奴隷マスクの方が良かったんじゃねえの。今から受付に言って交換してこいよ」  奴隷マスク、という単語を耳にして、アナルがきゅうっと指を締め付けた。目にも口にも大きな穴が開いており、一切顔を隠し切れていないマスクのことだった。  大人しく従おう――と考えた矢先のことだった。さすがに、身バレの危険性が高すぎると思い直す。顔を晒すのは、どうしても無理な願いだ。聖は小さく喘ぎ声を漏らしながら、首を横に振る。すると男は、扱いていた聖の陰茎に向かって、軽くデコピンをした。 「あ、お゙っ……んっ♡」 「いいだろ、ほら奴隷マスクにしてこいよ。くちまんこも可愛がってやるから」 「や……っ」 「あ?」 「っ、ん゙〜〜〜っ♡」 「まあ、いいわ」  聖がホッとしたのも束の間。聖の顔を覆っているマスクに、男は手をかけてくる。首元から指を一本差し込み、覆面を脱がせようとしてきたのだ。  ――どうしよう、どうすればいい。もしここで拒否をしたとして、逆上されたりしたら? 仕事のときに見える範囲に、もしも傷がついたりしたら困る。なら、ちょっとだけずらして、フェラに応じるか? 万が一、相手が自分のことを知っていたらどうする、それで脅されたりしたらもっと困る。  聖が抵抗しようと思えば、相手の男を引き剥がすことなんて簡単なのだが、それは出来なかった。しかし、さすがにこれは――と力強く拒否の意思を示そうとしたときだった。

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