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恋のはじまり☆10
『なんだったんだ・・・』
『大丈夫かな?中野くん・・・』
『大丈夫じゃない?
まだ、傷は浅かったと思うし』
『だと いいけど・・・』
中野の姿が見えなくなるまで見送って
俺たちも帰ることにした。
途中、スーパーに寄って、買い物をした。
寒い中 ずっと外にいたから、とにかく温かい物が食べたくて今夜は鍋!
俺が野菜を切る係りで、
遊は新見さん直伝の鶏団子を作っている。
準備を終えると、鶏団子をスプーンですくって
だし汁に入れて、煮込み始めた時・・・
『そういえば・・・』
遊が なにか言いたげな様子で俺を見た。
『ん?』
『えと・・・晃くん・・・・前、僕にさ・・
一目惚れしたって言ってたけど・・・ホント?』
『え?あ、あー、うん。ホント』
『・・・////・・・えと、高校に入ってから?』
『んー?いや、それより ちょっと前』
『え?中学ちがうのに?』
『・・・うん』
そう。
実は、遊を初めて見たのは俺がまだ中学生の頃。
『遊さ、よく◯◯公園に夕方いなかった?』
『・・・・・?・・・うん』
『俺、時々 あの公園の側の道、チャリで通ってたからさ。公園のベンチに座ってる遊をよく見かけてたんだ』
『え?でも、あの公園って晃くんちから離れてるよね?』
『うん。公園の近くに、スーパーあるじゃん?母さんがあの店にしか置いてない物があるからって、しょっちゅう買い物に行かされてたんだ~』
『へー。そうなんだ・・・』
遊は、その頃の事を思い出したのか
下を向いて、黙りこんでしまった。
あ・・・・・・あれ?
そのうちに グツグツと鍋が蓋を押し上げ、
ガタガタ音を立てると
『あ!野菜、入れないと・・・』
慌てて、野菜を放り込み、また蓋をして
黙りこむ。
しん・・・と静まりかえる部屋。
いたたまれなくなって、
『ごめん・・、嫌な事、思い出させた?』
遊に謝ると・・・
遊はパッと顔を上げて俺を見て慌てたように言った。
『あ、ごめん。そうじゃなくて・・
僕が知らない間に、晃くんは僕を知ってたんだ・・・
って思ったら なんだか不思議で・・』
『って言っても、その時は遠くて
顔は見えてなかったんだけど・・・』
『え?・・・え?じゃあ・・・僕を・・見たのって・・・』
『うん・・・。1度ね・・すれ違った事があって・・・
その時に・・・』
『えー、そうなんだ』
そう・・・
その時に 俺は・・・・・・
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