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恋のはじまり☆11

** 回想 ** ───中学3年生の冬 いつものように、母さんに買い物を頼まれた俺は 遠く離れたスーパーにチャリを走らせていた。 『もー!受験生に行かせるな、つーんだよ! まったく! なぁーにが、 「いい気分転換になるでしょー?」だっ!』 ぶつぶつ文句を言いながらも、断らない俺。 ───と、いうのも・・・ 実は、ちょっとだけ気になる事があるから・・・ 『っと・・・もうすぐ、だ・・・』 目的のスーパーの、手前にある公園。 少しスピードを緩めて、公園の中を見てみる。 奥のベンチ・・・・ ボーッと座る人影。 『いた・・・・』 今日もいる・・ 多分、俺と同じくらいの歳のヤツで・・・ 何故か いつも、あそこのベンチに1人で座っている。 誰かを待ってる風でもなく、何もせずに ただただ座っているだけ。 俺も、たびたび来てる訳じゃないから、分からないけど、通る度にいるから、ほぼ毎日いるんじゃないだろうか・・・なんて。 なんでなのかは分からないけど 何となく・・気になるんだよなぁ・・・ って、話しかける勇気はないけど。 『さて、買い物買い物!』 * * * スーパーで頼まれたものを買って、公園までチャリには乗らず、押して歩く。 チラリ、と公園を覗くと・・・・、 あのベンチには、もうヤツの姿はなかった。 『あーぁ』 なんか・・残念 また会えるかな・・・? いや、会うっつーか見るだけ、だけど。 『帰ろ・・・』 長い道のりを思って「うし!」と、気合いを入れてからチャリに跨がり、漕ぎ出そうとした時、こちらに向かって歩いてくる2人組が見えて足が止まった。 その2人組の1人が・・・・ いつもベンチに座っている、アイツだったから。

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