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恋のはじまり☆12
いつも見てたとはいえ、顔はよく見えてなかった・・・
なのに、なんとなくの雰囲気と・・・髪型と、
学校指定のカバンと カバンについている赤いモノ・・・
キーホルダーか何か・・・? にも見覚えがあった。
特にカバンは
さっき見たばっかりだから間違いない。
『・・・・・・・・・あ』
気がつけば、2人は どんどん近づいて来ていた。
うわ・・・
うわわ・・・
なんか緊張するっ!
向こうは俺を知ってる訳ではないのに
どうにも動けなくなって焦った俺は
ポケットからスマホを出して見ているふりをする。
もう、すれ違うって距離まできて、
2人はピタリと足を止めた。
どうやら誰かに呼ばれたらしい。
俺もつられて、2人が視線を送る先を見ると
タクシーが横付けされていて、
開いたドアの側に女の人が立っていた。
その人が手招きすると、アイツではない もう1人の方がタクシーへと走って行く。
残ったのは、俺が気になってるヤツの方・・・。
ソイツは・・・タクシーに乗り込む2人を見て、
寂しそうな顔をしていた。
すると、タクシーの窓が開いて
さっきまで一緒にいたヤツが手を振る。
『・・・・・・っ・・・』
手を振り返す・・寂しそうな、泣きそうな、
でも悲しいくらい きれいな顔で笑って見せる
その顔を見た途端、世界が止まったような気がした。
瞬きも、呼吸の仕方も忘れるほど 目を奪われた俺は、
そいつから目が離せなくなっていた。
タクシーが走り去っても、しばらく その場に立ち尽くしていたソイツは、ゆっくりと歩きだす。
何もかもを諦めたような・・・生気のない表情。
なにか声をかけたい・・・と衝動にかられた
けれど・・・
俺に何が出来るだろう。
俺だったら、いつも傍にいる・・
笑わせてやれる
あんな悲しい顔、させない
俺だったら、絶対に・・・
根拠もなく、そんなことを思った。
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