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誤解と誤算★11
* * * 晃・side * * *
おかしな性癖の保険医と騒いでいたら、
『あ・・きら・・・くん』
弱々しく掠れた遊の声が聞こえてきた。
───あ。ヤバ・・・っ!
大きな声を出してしまった事を
今さらながらに後悔して、遊の方を振り向く。
『ご・・・ごめん!起こしちゃった?』
『ん・・・ん・・・・・・・か・・・った・・・・』
『ん?・・・なに?』
声が聞き取りづらく、顔を近づける。
───と、遊の目からポロっと涙が 零れた。
『よか・・・た・・・。
来て・・・くれないかと・・・おも・・て・・・ぼく・・・』
途切れ途切れでも遊の言いたい事は分かった。
昨日の事を気にして俺が来ないかも・・・なんて
不安になってたらしい。
そんな事ある訳ないのに。
例えば・・・ものすごく、とんでもない大ゲンカをして
怒ってる真っ最中だとしても
遊のSOSに応えないとか・・・あり得ない。
あるハズがない。
『・・・バカ。来ない訳ないでしょ・・・』
『だっ・・て、ぼ・・・く・・・きの ・・・ひどいこと・・・』
『ゆーぅ?そんな風に思ってないよ?
俺の愛は海より深いんだからね?』
『・・・あ・・きら・・・くん・・・』
ポロポロ溢れる涙を拭って
おでこに そっとキスを落とすと、
遊は ほんのり 笑って、
『晃くん・・・すき・・・』
なんて、言ってくれた。
『んー?へへ、俺も~。』
『・・・・・・うん』
よかった・・・。
笑ってくれた・・・。
安心して ホッと息をつく。
───と・・・
『君たち~?俺が居るの 忘れてるよねぇ~?』
背後から、間延びした声が・・・・。
ヤベ・・・!
すっかり忘れてた!!
『あ・・の・・・////』
『・・・・・っっ////』
『まぁ、仲良きことはいい事なんだけど~。
えっと、篠宮くん?どう?どんな感じ~?』
言いながら スタスタとベッドの傍まで来て
俺を体で押し退ける。
『うわっ!ちょ・・・・っ・・・』
結構な力で押されて よろめいた俺は
2、3歩 後ろに下がった。
そんな俺を気にもせず、遊の額に手をあてて、
熱を確認したり、脈を診たりしている。
『ん~。熱は下がってるね。
って事は~、インフルエンザじゃないかなぁ。』
『え?マジですか?!』
『分かんないけど・・・関節とか痛い?』
『いえ・・・』
『うーん。えっと、じゃあねぇ~。
とりあえず家で安静にして様子 みてもらって~、
もしまた熱がドーンって上がるようなら
病院 行くって感じで どう~?』
『・・・は、はい。じゃあ、そうします。』
熱が出て、すぐ検査しても
陽性反応が出ない事もあるらしい・・・。
って事は早く家で寝かせてあげた方がいいかな。
『遊、頑張って起きられる?』
『・・・・・・うん・・・』
保険医にも手伝ってもらって
なんとか遊を おんぶして
よっこらしょっと立ち上がった。
『じゃあ、帰ります。』
『うん。お大事にね~。』
『ありがとうございました。』
感謝の思いを込めて丁寧に頭を下げてから
保健室を後にする。
保険医は、そんな俺たちを廊下まで出て
ずっと見送っていてくれた。
うーん。
かなり 変な人だったけど
悪い人ではなかったな・・・。
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