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最強の来訪者☆8

* * * 英道・side * * * 『駅前のケーキ屋さん、知ってる?  あそこに歩いて行ってきて。』 『え、駅前?あ、歩いて?・・と、遠・・っ・・』 『そんなに遠くないわよ。』 『え、えと・・・お、俺・・・1人で?』 『そうよ。さっき そう言ったでしょ?  聞いてなかったの?』 『─────ひ、ひいぃっっ!!  聞いてましたっ!!で、でも・・あの・・っ・・』 ハルが、不安げに チラリと俺を見る。 おそらく、自分がいなくなると 姉ちゃんと俺が2人きりになってしまう。 それを心配しているのだろう。 『晴臣くん?行くの?行かないの?』 ためらうハルに、痺れを切らしたハルの姉ちゃんは 恐ろしいほどの冷たい笑みを浮かべ、 ハルへとスタスタと近づいていく。 『ひ・・・ひいぃぃっっ!!』 『行くのかしら?行かないのかしら?  うふふ。もちろん行くわよね?』 鼻と鼻がくっつくほどの至近距離で、 詰め寄られたハルは・・・あっさり白旗をあげた。 『い、行ってきます!喜んでっ!』 あ、負けた。 まぁ、予想どおりだけど。 財布を手に、慌ててリビンクを 飛び出そうとするハルに、 『私の名前で予約してあるから。』 と、驚きの一言を発する。 『へ・・・?よ、予約?』 『そう。はい、すぐ行く!』 『は、は、はいぃぃぃっっ!』 『ちゃんと歩いて行くのよ?いい?』 『は、はいっ!』 余程、怖いのか・・・ハルは俺の方を見ることなく 猛ダッシュ(それでも言いつけは守って早歩き)で 出ていった。 『も~あの子ったら・・・騒がしいわね。』 『・・・・・・・・・・・。』 いや、それアンタのせいだろ。 つーか。予約してたって何だ。 今の感じだと、 わざと忘れてきたんじゃねーの? って気がするんだが。 わざと・・・? わざと、か。 だったら・・・コイツの目的は・・・・・・・ 1つしかないな。 そう。 それは・・・俺と2人きりに なること、だ。

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