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クリスマス
* * * 山咲 薫の場合 * * *
クリスマスにデートで居酒屋に来るヤツは
あまりいない。
だから今、店にいるのは
クリスマスなんて関係ないサラリーマンに
ただ飲みたいだけのオヤジ、
彼女いない寂しさをヤローで埋めてる悲しい輩に
付け焼刃で合コンしてるヤツら
みんな妙にテンション高いわりに
どこか虚しさも漂うおかしな空気だ。
───で、それは客だけに限らず・・・
『てーんちょー・・・
なんで みんな彼女がいるんでしょーかぁ・・』
どんよりと近づいてきたのは、バイト。
クリスマスは彼女がいるヤツは休みたがるから
必然的にフリーのヤツが出てくる事になる。
『あ?みんないる訳じゃねーだろ。』
『でも俺の周りはみんな いるんですぅ~』
『ああ、そう。』
『どうやったら出来ますかねー。
てか、みんな、どうやって作ったんだろう・・・』
『さあな。』
『・・・店長は彼女いますか?』
『今は いねぇな。』
『え!?わー!仲間だぁ!!』
『あぁ?一緒にすんな。』
『えー。店長、女の子の知り合い多そう・・・
誰か紹介してくださいぃ~。』
『面倒だからしない。仕事しろ。』
『・・・・はーい・・・・。』
バシッと頭を小突くと
トボトボとした足取りで仕事に戻っていくバイト。
背中に哀愁を漂わせて。
そんなに彼女が欲しいかねぇ?
女なんて面倒くさいだけだけどな・・・。
まあ、男でも面倒くさいヤツは
面倒くさいか。
“ 捨てないでー ” なんて
泣きついてきたヤツもいたな。
(ボコボコにして ゴミ箱に棄ててやったけど)
『てんちょお、大変です~!』
さっきのバイトがドタドタと駆け込んできた。
『なんだ?トラブルか?』
『は、はい~!』
酔っぱらい同士がケンカでも始めやがったか?
よし。
絞めあげてボコボコにして外に放り出すか・・・・
『どこだ?』
『3番テーブルです!』
『3番?合コンテーブルか。』
『はいっ!大変なんですっ!!』
首を伸ばして3番テーブルを見るが
みんな楽しげに盛り上がっていて
揉めている様子は微塵もない。
『・・・・おい。どこが大変なんだ?』
『あのテーブルで・・・なんと・・・なんと・・っ!
・・・・カップル成立したんです~!!』
『・・・・・・・・・あ?』
カップル成立だぁ?
『あああ!全然 知らない人にも彼女が・・・・っ!
俺はどうしたらいいんでしょうっ!!』
『・・・・・・・・・💢』
知るか。
なんなんだ、コイツは。
『てんちょおおお!』
『うっせぇ!仕事しろっっ!』
思いきり足蹴にしようとして
ふと思いとどまった。
コイツは・・・・・・・・・
蹴ったら速攻 辞めるな。
(←魔王の勘)
あー、くそ。
イライラする。
すげー、
ムカつく。
誰か殴りてぇ。
『・・・・・・・・・あああああ!晃ぁぁ!!』
なんでアイツは今日、休んでやがんだ・・・っ!
よし。
明日、アイツを殴ろう。
俺の気がすむまで。
ふっふっふ。
明日が楽しみだ♡
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