569 / 761

クリスマス

* * * 中野 透の場合 * * * 2人、並んで夜の町並みを歩く。 と、言っても恋人でも友達でもない俺たち。 手を繋ぐとか、腕を組むとか、そんな事出来ない。 だから なんともいえない微妙な空気と距離感を 保ったまま・・・・・かなり ぎこちない。 コイツ、見た目は女の子だし 周囲には ただの初々しいカップルにしか 見えないのではないかと思う。 ───つーかさぁ なんで俺、コイツと歩いてんの? ・・・なんだよ、デートって。 思わず、大きなため息をつくと 俺が怒ってると思ったのか 申し訳なさそうに俺を見て 謝ってきた。 『あの・・急にへんな事、お願いしてすみません。  ・・クリスマスなのに独りが淋しくって・・・・・  迷惑でした・・・よね・・・・?』 『へ?!ああ・・・、いや・・まぁ・・・///』 ───だから! 俺の好きな顔で上目遣いはヤメロっつーの! うっかり可愛いとか思っちゃうだろーが! まあ・・・・でも・・・・・まあ、独りは淋しいよな。 クリスマスに。 ・・・・・・・ん? って事は、コイツも今日を一緒に過ごすヤツは いないって事・・・・? ・・・・・つまりはフリーって事?? って!また俺はっ!! そんなのどうでもいいんだって////!! そ、そんな事より・・・ 『そ、そういや、話って何?』 『あ。えと・・・そうですね・・・・・・  じゃあ、近くの公園 行きませんか?』 そう言われて、公園へと足を運び、 ベンチに座る。 シーン 話があると言いながら何も喋らない。 不思議に思って隣を見ると モジモジキョロキョロ、落ち着きがない。 『で、話って?』 寒いし、あんまり時間をかけたくない俺は 仕方なく助け船を出してやる事にした。 すると、ようやく決心がついたように 口を開いた。 『あの・・・あの時はすみませんでした。』 『・・・・・・・・・あの時?  ・・・あぁ、俺が勘違いでコクった時の事?』 『は、はい。  ・・・・・・・・あの、ホントは私・・・・・・  すごく嬉しかったんです。』 『・・・嬉しかった?』 『・・・・・・はい。』 『なんで?』 『そ、その・・・・私も・・・毎日あなたに会って  好きになってたから・・・です・・・////』 『・・・・・・・・。』 ────なんだそれ、 今さら・・・なに言ってんだ。 『でも、あなたは・・・私の事を女の子だと  思ってたでしょ?』 『・・・は?ああ・・・・・まあね。』 ───だからコクったんだし。 『・・・だから・・・ワザと あんな格好して、名刺 渡して  男だって分かるようにして断ったんです。』 『・・・・・・・・・え。』 『でも、あれから・・・あなたが来なくなって  会えなくなって、ものすごく後悔したんです。  自分が男だって事も、好きだって事も・・・  きちんと伝えて、私がフラれるべきだったって。』 『・・・・・・・・。』 ────そうだったのか・・・ 事情は分かったけど、何を言っていいか分からない。 ただ じっと座っていると、 アイツは スッと立ち上がり俺の目の前に来ると 深々と頭を下げた。 『私は男です。  ・・・でも、あなたが好きです。』 『・・・・・・・・・え。』 『フッてください。』 『・・・・・・・・え?』 『きちんと けじめをつけたいんです。  私をフッてください。』 1度、頭を上げ、俺の目をしっかり見てから また頭を下げる。 『・・・・・・・・あの。』 『はい・・・。』 ───簡単だ。フレばいい。 バイバイでも、サヨナラでも なんでもいいから・・・言えばいい。 でも・・・なんだろう。俺の この気持ちは。 バイバイもサヨナラも出てこない。 もともと顔が超 好みだし、話してみれば 意外にしっかりしたいい子だし・・・ やっぱ、つきあうのは無理だけど、俺は・・・ 『友達に・・・なんない?』 『───え?と、友・・・達?』 『うん。イヤじゃなければだけど。』 『え!?イヤなんて・・・そんな・・・』 『始めに言っとくけど恋人としてつきあうのは無理。   それでも良ければ。』 『・・は・・・はい・・・!いいです!  恋人になれなくても・・・・友達になりたいです。』 『・・・・・・////』 嬉しそうに顔を輝かせるコイツは やっぱり、可愛い。 なんで男なんだよ・・・! ま、思っても仕方ないんだけど。 『えーと、お前、名前は?』 『あ、桜田 伊吹(さくらだ いぶき)です。』 『さくらだ・・・なんか・・・カッコいい名前・・・』  (顔に似合わず) 『はい。よく言われます・・名前負けしてるって。』 いや、名前の方が負けてる気がする・・・ 『・・・俺は中野 透。よろしく。』 『はい!よろしく。お願いします!』 手を差し出すと、両手で俺の手を包んで ブンブン上下に振る。 ってか、手が冷たい。 『体も冷えてきたし、とりあえず どっか行く?』 『はいっ!カラオケなんてどうでしょう?』 『おっ!いいね~。』 ────こうして俺のクリスマスは・・・ 「彼女」は出来なかったけど 見た目は女!中身は男!・・・・な 不思議で新しい友達が出来たのだった。 メリークリスマス!

ともだちにシェアしよう!