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クリスマス

* * * 志田 湊の場合 * * * 『じゃあな~、湊!』 『うん、またな~。』 ───今日は、クリスマス。 去年は、受験で なーんにも楽しめなくて つまんなかった。 だから今年こそは・・・・! なんて、思ったりもしたんだけど 悲しいかな、ハイレベルな進学校に通う俺は・・・ 今年もまた勉強、勉強のクリスマス。 『はー、お腹空いたー。』 塾を終えて、自転車に乗り 家路を急ぐ。 勉強は嫌いじゃない。 彼女が欲しい・・・とも思わない。 ただ、ちょっとだけ 友達とクリスマス気分を味わいたかったな~ って思っただけ。 もうすぐ家に着く・・・ってところで ピローンとポケットのスマホが鳴った。 家まで帰って、自転車に鍵をかけてから、 スマホを見る・・・と、 『ん?兄ちゃん・・・?』 遠くの大学に通う そこそこ頭のいい兄、 晃からのメッセージだった。 「メリークリスマ~ス♪青春してるかー?」 という言葉と一緒に、写真も送られていた。 兄ちゃんと、恋人の遊くんが 頬と頬をくっつけて、笑顔でピースしている。 『相変わらず、仲よさそうだなぁ。』 ピローン。 「俺は幸せ過ぎて、超幸せでーす♪」 『なんだ そりゃ。』 ピローン。 「湊も熱い夜を!イヒヒ。」 『・・・・・・誰とだよ。いねーし。』 ───ただノロケたいだけか! イヒヒって なんだ・・・! ホントに、もう。 思い出すと 去年も受験生の俺に 「今年も2人きりになりたいから出かけろ」 とか言うくらい、遊くんが大好きな兄ちゃん。 一昨年、2人きりになれたのが楽しかったらしくて 味をしめたんだよな。単純な人だ。 結局、俺、親とホテルに泊まったんだよな・・。 って、親もデートと称して 夜遅くまで帰ってこなかったけどさ。 ゆっくり勉強できて良かったけどさ。 もう1度、写真を見る。 この2人、ホントに幸せそうで 男同士なのに、って偏見は全然なかったな。 きっと、ずっと一緒にいるんだろうって思うし そうであって欲しいって思う。 『ただいまー。』 『おかえり、湊~!』 『塾、お疲れ様♡』 玄関を開けると、 待ってました!とばかりに 手を繋いで出迎える父と母。 こっちもラブラブ。 この両親にして、あの兄あり。 『お腹すいたでしょ?チキン食べましょ♪』 『ケーキもあるぞー♪』 『うん。』 今年も友達とは出来なかったけど・・・ 騒がしい両親のおかげで、クリスマス気分は 充分 味わえそう。 という訳で、兄に返信しておく。 「青春も熱い夜もないけど  俺も超幸せでーす♪」 ───送信。 さ、チキン食べよ!

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