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恋のはじまり??☆21
** 中野・side **
『はあ・・・はあ・・・っ、つ、着いた・・・』
1度も立ち止まらず、必死に走ってきたから
息が苦しくて・・・早く 伊吹の顔が見たいのに
動けなくて・・・気持ちだけが焦る。
『・・・・い、ぶき・・・・』
早く、早く。
会いたい。
顔が見たい。
話したい。
そもそも伊吹が俺に会ってくれるのか、
・・・・不安はある。
あるけど、会わなきゃ・・・!
大きく深呼吸して・・・
よし!と気合いをいれてから
決死の覚悟で チャイムを押す。
『はい。』
───と、声がして 誰なのか確認する事もなく
いきなりドアが開いた。
いた!よかった!
でも、不用心・・・と思いつつ
出てきた人物を見る・・・・
が、
それは 伊吹ではなかった。
『え・・・・・?』
だ、誰・・・・?
ドアを開けたのは、背が高くて、ごっつい男・・・。
ソイツは、無遠慮に俺をジロジロ見てから
『誰?』
と、ぶっきらぼうに聞いてきた。
『え・・・・あ、あの・・・・』
『伊吹の知りあい?』
なんて言えばいいのか 迷っていると
向こうが続けて聞いてきた。
とは言っても・・・なんだか敵意むき出しで、
歓迎されてる感じではないけど。
『・・・は、はい・・・・』
『ふーん。・・・もしかして中野・・・くん?』
・・・しかも俺を知ってるし。
伊吹から聞いたのか・・・?
そうだ!伊吹・・・っ!
『はい、中野です!
あの・・・・あの、伊吹は・・・?』
『・・・・・いるけど。』
いる!
部屋の中を見ようとして、玄関に近づくと
男が立ち塞がり、阻止してくる。
『あの・・・会いたいんです!』
俺の「会いたい」って言葉に
男が急に怒りを露に、胸ぐらを掴んできた。
『お前・・・、いまさら何 言ってんだ?』
『・・・・・・え』
『アイツがどんなに傷ついたか、
どれだけ泣いたか・・・お前、分かってんの?』
『・・・・・・・・っ!』
その言葉に俺はハッとする。
そうだ・・・。
伊吹・・・・。
自分から別れを告げた伊吹。
それが、どんなにツラかったか・・・
あの後、伊吹がどうしてたか・・・
俺は・・・真剣に 考えただろうか。
・・・ごめん。
ごめん、伊吹・・・。
胸がキリキリと傷みだす。
俺はいかに自分が甘かったのか
ここに来てやっと気がついた。
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