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恋のはじまり??☆23
** 中野・side **
『久しぶり。』
『い、伊吹・・・』
あの怒り狂っていた男とは反対に、
伊吹は 至って穏やかだ。
『どうぞ?入って。』
『あ、うん・・・』
伊吹に続いて中に入る・・・と、
今まで見たことないくらい 部屋の中が
・・・・荒れていた。
『あの、ごめんね、散らかってるけど。』
『いや・・・・』
最後に話した日に座った畳に、
促されて座る。
・・・・・・・。
一体、どうしたんだろう。
布団は敷きっぱなしだし、
食べ終わったコンビニの弁当や、
カップラーメンの容器、脱いだ服が
あちこちに散乱している。
思わず、キョロキョロと部屋を見回していたら
伊吹が布団を半分にたたんで、そこに座った。
『汚くて ごめん。風邪ひいてたから
ずっと 掃除してなくて・・・』
『風邪・・・・・・・?』
そういえば。
別れを告げられたあの日、上半身 裸だったし、
寒そうにだったし、くしゃみ してたし。
それに、さっきは気がつかなかったけど・・・
顔色が悪い気がする。
その辺の事を詳しく聞いてみたい、と
思ったけれど・・・・・・・・・
伊吹の方が先に口を開いた。
『で、話したい事ってなに?』
『────あ。え・・・と、・・・あの、俺・・・
本当に伊吹に悪い事したって・・・謝りたくて・・・』
『悪い事?』
『うん。伊吹の事、傷つけた。ごめん。
本当に、ごめんなさい。』
両手をついて、心からの想いを込めて
頭を下げた。
『中野くん。・・・・顔、上げて。』
そう言われて、ゆっくり顔を上げると
伊吹は、じーっと俺を見つめていた。
そして、目を閉じて、深く深く 息を吐いてから
もう1度 俺を見て ポツンと呟いた。
『・・・中野くんは悪くないよ。』
『え?』
『悪いのは・・・・・俺だよ。
全部、俺が悪いんだから気にしなくていいよ。』
『え?なんで!伊吹は悪くない・・・っ!』
『違う。悪いのは、俺・・・』
『・・・・・・っ・・・!?』
何で?
なんで、伊吹は こんな事、言うんだ?
悪いのは・・・俺の方なのに。
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