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恋のおわり?★2
* * * 伊吹・side * * *
中野くんは、外に追い出してからも何回か
ドアを叩いて 名前を呼んでくれた。
でも、いつも すぐに「うるさい」と 怒鳴る
アパートの住人の声に・・・驚いたのか気負けしたのか
それとも そんなに俺に執着が ないのか・・・
それ以上の行動はなく
あっさり帰って行ってしまった。
『はは・・・・こんなモンか。』
あっさり。
ホントに、あっさりと終わってしまった。
好きだったのは、俺だけって事。
当たり前だけど。
分かってた事だけど。
『バーカ』
ペタン・・と、玄関に座り込む。
寒くて寒くて、服を着なきゃ、
髪を乾かさなきゃ、って
頭では思っているのに 体が動かない。
“ もしかしたら
戻ってきてくれるんじゃないか ”
なんて・・・・・
どこかで淡い期待をしてたのかもしれない。
自分から切っておいて未練たらしいけど。
でも、待っても待っても
中野くんは戻っては来なかった。
あーあ。
ホントに・・・終わっちゃった。
終わらせてしまった。
もう・・・終わったんだ。
『はっくしゅん!』
あー、ヤバいヤバい。
風邪ひいちゃう。
真っ暗になった部屋に戻って
とりあえず服を着る。
髪は 少し湿ってるくらいだから
タオルで拭くだけにして、
すっかり冷えてしまった体を温めるため
ウイスキーをストレートで煽った。
『あー、美味い。』
喉が、カァーっと熱くなる。
もう1杯、一気に飲み干すと・・・
もう動くのも面倒になった。
もう、どうでもいい。
何もかも。
『バイト・・・休もうかな・・・』
口に出したら、もう休む気になってしまって
barのオーナーに電話した。
『もしもし。伊吹?』
『うん。あの、今日・・・休んで い?』
『お前・・・休むっつーか、辞めるとか何とか
言ってなかったか?』
『・・・ああ・・・そうだっけ?あー・・・まぁ、
そっちは保留で・・・』
『・・・なんかあったのか?』
『いや・・・んー。まぁ色々。とりあえず、
今日は休むから。』
『分かった。』
『ごめんね。じゃ、よろしく。』
───よし、休んだ。
今日は とことん飲んでやる。
そして・・・・・
忘れよう。
忘れるんだ、なにもかも。
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