627 / 761
恋のおわり?★5
** 伊吹・side **
『・・・・っ、・・・あ・・・・・・っ・・・・・・』
そうだ・・・・。
思い出した・・・
俺・・・・・俺・・・・・・中野くんと・・・
中野くんと・・・・・・・
思い出した途端
キュウっと胸が苦しくなった。
痛い。
・・・痛い。
昨日は 泣きたくても泣けなかったのに・・・
鼻の奥がツーンとなって
目頭も熱くなってきて・・・
急いで洗面所に走って冷たい水で顔を洗った。
もしかしたら・・・
昨日 泣けていたなら・・・
少しはスッキリしたのかもしれない。
けれど、悲しみを、涙を溜め込んだ今は・・・
泣いてしまうと 果てしなく どこまでも
自分が落ちていきそうで・・・怖い。
どうしよう・・・・
怖い・・・・・・!
どうにかしたくて、また走って部屋に戻り、
新しい日本酒の瓶に手を伸ばした。
コップに注いで飲み干す──と、ほんの少しだけ
頭の、胸の、心の痛みが薄らいだ気がして
続けざまに もう1杯。
酒に逃げるのはダメなんだって分かってても
止められなくて、何度も酒を呷った。
あー、なんだこれ・・・
昨日は 酔えなかったのに
頭 ふわふわ・・・・・・・・・気持ちいい。
酔いがまわってくると
悲しくて、ツラくて、苦しかった思いは
怒りへと方向を変えていく。
『中野のバカ野郎ぉ!
何が一緒に住もうだぁ!
俺の事、女扱いしやがってぇぇぇ!』
窓を開けて、思いのまま大声で叫ぶと
ちょっとだけ スッキリした。
すると、どこかの窓が
ガラッと勢いよく開いた音がして
「うるせぇ!」と、いつもの住人の怒鳴り声が響いた。
『お前の方が うるせぇんだよっ!バーカッ!』
負けじと、言い返す。
窓から顔を出した男と目があった。
言い返して来るかと思って待ったけど、
男は何も言わず、
静かに部屋へと引っ込んでしまった。
『はっ、なーんだ・・・・つまんねーの。』
いつも 絡んでくるクセに逃げやがったか。
もしかして・・・ホントは弱いのか?
なんて考えると、おかしくて・・・
俺は、声を出して笑い出していた。
ともだちにシェアしよう!