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夏休み:初めての旅行☆22

『また、2人でおいで下さいね』 『はい』 『はい・・・!』 『お待ちしております』 女将が、ニコニコ笑って深々と頭を下げる。 俺たちも慌てて頭を下げて、 『ホントにまた来ます!』 『ありがとうございました』 と、返した。 それから 駅まで送ってもらい、車を降りたおじさんに 何故かギュウギュウ抱きつかれ、 『また来いよ、また来いよ~』 と何度も念を押され、遊に抱きつくのをなんとか押さえて、ヘトヘトになって ようやく別れた。 『なんか・・・すごかったな・・・』 『でも、いい所だったねー』 『うん。また来よう。2人で』 『ふふ・・・うん。2人で、ね』 2人で・・・・ 旅館がある方の山を見つめる。 緑がすごく深くて、空の青さと相まって 何とも言えない美しさ。 さっきまで、あそこにいたのに なんだか夢みたい・・・。 『あそこは涼しかったけど 家に帰ったら暑いだろうねー』 と、遊。 家・・・・・? 家と言えば。 あ、そうだ! 遊に言うの忘れてたっ! 『あの・・・遊?』 『なに?』 『あの、俺・・・・さ、これから ついでに実家に帰ろうかなーって思ってるんだけど・・・・』 『・・・・・・・・・・・え?』 途端に、遊の顔が曇る。 『そう・・・・・・』 『遊?』 『・・・・・・・・・』 あれ? 表情が固くなって なにも喋らなくなっちゃった・・・? 『ゆ・・・遊?』 『・・・・・・・・あ。 あ、あぁ・・実家、かぁ。・・・・・そうだね』 『遊?なんか・・・・』 あるの? と、聞こうとしたら 『じゃあ、僕は先にマンションに戻ってる』 と、遊にしてはキツめの口調で遮られた。

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