96 / 761
遊の告白★2
僕が、母に愛される事を諦めたのは
小学校6年生の時だ。
夏休みの宿題で、弟と同じ絵画展に出品した絵。
僕が大きな賞をとり、弟は佳作だった。
僕は 母に見せようと、賞状を持って意気揚々と家に帰った。
弟よりいい賞をとった。
これで誉めてもらえる、そう思っていた。
だけど・・・
母は、その賞状を僕の目の前で
ビリビリに引き裂いた。
『なんで あんたなの!』
『あんな絵が なんで!』
そう叫びながら。
――ダメ・・・なんだ
ダメなんだ・・・
僕は何をしても・・・
誉めてはもらえないんだ
喜んではもらえないんだ
何をしたって・・・嫌われるんだ・・・
それまで、頑張っていた事が
必死にやっていた事が
全部 無駄だった事を知った。
それからの僕が つらかったか、
・・・というと、
実はそうでもない。
頑張らなくてよくなった分、
誉められたい、
愛されたい、と思わなくなった分、
何も考えなくてよくなった分、
気持ちは楽になっていた。
僕は、家族になることを諦めた。
その後は、家の中ではひっそりと
目立たぬように 過ごした。
習い事は全部やめた。
生きていくうえで 必要ではない物に、お金を出してもらうのは嫌だったから。
高校に入学したら、僕の食事は用意されなくなった。
食費と 1日でも早く家を出るためのお金を
貯めるために、僕は アルバイトをする事に
した。
でも・・・すぐに母の耳に入り、働くことなく辞めさせられてしまった。
裕福な家庭で育つ僕が、アルバイトをするなんて、世間体を気にする母には 許せなかい事だった・・らしい。
それから、高校生にしては、かなり高額のお金をお小遣いとして、毎月 渡されるようになった。
「これだけあれば
遊ぶのにも困らないでしょう?」
なんて 言われて・・・
アルバイトは、ただ遊ぶお金が欲しかっただけ・・・って、勘違いされたみたいで 悔しかったけど、話しても分かってもらえない、いや 話を聞いてすらもらえない状況では どうする事も出来なかった。
もちろん、その お金は 必要最低限しか使わないようにした。
高校を卒業したら、使わなかったお金は全部 突き返してやろうと思っていた。
それが変わったのは、
大学進学を考え始める時期。
母から、
人に聞かれても恥ずかしくない大学に行け
お金はいくらでも出すから、できるだけ
遠くの大学に行け
出て行ったら、
もう、この家には2度と帰ってくるな
そう言われた時だった。
ともだちにシェアしよう!