175 / 761
晃の受難☆1
その日、俺は 帰り道を急いでいた。
うわー!降りそう・・・っ!
急げっ!急げっっ!!
朝はすっきり晴れてたし、
天気予報でも雨が降るのは夜になってから、
って言ってたから 安心して、洗濯物を干したのにーっっ
!
午後から 急に曇りだして 、大学が終わった頃には、灰色の雲が空を覆い 今にも雨が降りだしそうな気配。
大丈夫!大丈夫だっ!
走れば、間に合うぅぅっっ!
必死で走っていると、
ポツッと、雨粒が顔に当たった。
ああ・・!ヤバいっ!
マジで降っちゃうぅぅっっ!
急げっ!急げーっっ!
よし!
あの角を曲がれば、あとは一直線だっ!
角を曲がって、スピードを上げようとした時、
目の前に人がいるのに気づいた。
あ、ヤベ・・・っ!
慌てて、スピードを落とす・・けど、
――ああ!ダメだっっ!
間に合わな・・・・・・・!
ドンッ!!
『『わあっ・・・!』』
派手にぶつかり、後ろに倒れそうになった所を、ぶつかった相手が 俺の手を掴んでくれて・・・そのおかげで、なんとか転ばずに済んだ。
『────っっ!!』
転ばずには・・済んだんだ・・・けど・・・
済んだんだけど・・・・
ある一点の痛みに思わず しゃがみ込む。
『・・・・う・・ぅ・・っ・・・』
『え?・・・君、大丈夫っ!?』
『う・・・ぅぐぐ・・・・っ・・・』
あ・・・・・、
あなたの鞄が・・俺の・・・
俺の・・・・
こ、股間に・・・
クリティカルヒット・・・
したんですぅ・・・っ・・・・!!
この痛み・・・半端ないっ!
痛い・・・っ! 痛いぃぃ・・っ!
『だ、大丈夫・・・?』
心配そうに、うずくまった俺の背中をさすってくれるが、その震動ですら痛みが走る。
『く・・うぅ・・・・』
痛くて痛くて・・涙が滲んで視界がぼやけてきた。
泣くなんて恥ずかしい・・・
でも、痛いんだもん・・・
『えっと・・・どうしよう・・・・!
あの、・・びょ、病院!病院・・・行く?』
『─────!』
――びょ、病院!?
冗談じゃないっ!
行けるか! 恥ずかしいわ!
『あ、いえ・・・だ、大・・・丈夫・・です・・・』
『でも・・すごく痛そうだよ?ドコ打ったの?』
『────!』
い、――言えるかーっ!
と、とにかく・・ここを早く離れたい・・・!
家に・・家に帰ろう・・・!!
『あ・・・の・・ありがとう・・ございました。
大丈夫・・・ですから・・・・・』
立とうとするけど、あまりの痛みに まったくといっていい程、動けない。
『・・・あの・・嫌じゃなかったら・・・僕が
家まで送るよ?家、近い?』
あぁ・・この人・・・優しい人だぁ・・・
カバンがぶつかったのだって、
わざとじゃないし・・っていうか そもそも俺が転ばないように助けてくれたんだし・・・
・・・でも!
『ありがとうございます。
・・・・ホントに大丈夫です・・』
初対面の人に家まで送らせるのは
さすがに・・・ないな。
1人で帰ろう・・・
ともだちにシェアしよう!