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遊の災難☆13
*** 新見・side ***
あれ・・・?
まずいな・・・
電車を降りて すぐに追いかけた・・はずが
あまりの人の多さに見失ってしまった。
とりあえず連れ込まれそうなトイレ、
死角になりそうな場所なんかを
覗いて見る・・・が見つからない。
『・・・・ちっ・・』
助けるかどうか、
さっきまで迷っていたのに・・・
いざ姿を見失ったら焦る。
『くそっ・・・』
もう1度 駅全体を見回した時、
改札の向こうに3、4人の人の塊が
歩いて行くのが見えた。
確信はなかったが、そいつらを追いかけて
急いで外に出た。
だけど、その姿は既になく
初めて降りた駅で どっちに行ったかも分からない。
ああ、めんどくせぇ・・
もう帰るか・・
一瞬 そんな思いが頭を掠めたけれど・・・
どうにも助けを求めたあの顔が・・・・
頭から離れない。
『はぁ・・・』
探すか・・・・
ホテルかどこかに連れ込まれたら
見つけようがない
・・・でも、手慣れたあの感じ・・・・
痴漢行為に金をかけるようには思えない
ここは
自分の勘を信じるしかない。
***
『・・・・・イヤだっ!』
少し走った所にある公園の方から、
切羽詰まった声が聞こえてきた。
男たちの笑い声も聞こえる。
直感を信じ、公園の奥・・・・
外灯が少ない芝生の方に急いだ。
『や・・・!やめ・・・、やめ・・・・ろっ!』
『はは。声 出すなよ』
『おい、ちゃんと押さえてろ』
『へいへい』
いた・・・・!
見つけた・・・!
薄暗い茂みに走り寄ると、今まさに 2人の男に押さえつけられ、もう1人の男に犯されそうになっているあの若い男の姿が目に飛び込んできた。
『うう!う――――っっ!』
聞くに耐えない、悲痛な呻き声。
頭に血がのぼって、突っ込む寸前で無防備な
キタねぇケツを晒した男の脇腹を思いっきり蹴った。
『───がっ!!!』
転げたそいつのケツを容赦なく 踏みつけ、
押さえこんでいた男の顎を蹴りあげる。
残った1人は突然 現れた俺にビックリして、慌てて逃げていった。
『おい、大丈夫か?』
『・・・っく・・・・うぅ・・・・・・』
襲われていた男は
目をきつく閉じて、ガタガタ震えていた。
『おい・・・』
近づいて、そっと体に触れると
『やめろ!触んなっ!』
急に めちゃくちゃに暴れだす。
よく見ると、スーツもシャツもボタンが飛んでいて、下は何も身につけていなかった。
体のあちこちに擦り傷が出来て、血が滲んでいて・・・かなり抵抗したらしい。
かわいそうに・・・
怖かっただろうな
体に触れるのは止めて 様子をみていると
ガサッと音がして 倒れていた男たちが走って逃げていくのが見えた。
追いかけてもよかったが・・・
まずはコイツを何とかしないと・・・・
自分のスーツの上着を脱ぎ、お腹の辺りにかけてやる。
『もう大丈夫だ。
アイツら、いなくなったぞ』
そう、静かに告げると・・・
ピタッと暴れるのをやめ、
恐る恐るという風に ゆっくりと目を開けた。
目を開けた途端、涙が溢れ出す。
見ていて痛ましいくらいに その姿はボロボロだった。
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