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遊の災難☆14

*** 新見・side *** 近くに散らばっていたスーツのズボンと下着を見つけ拾ってから傍に戻ると、じっと動かないままではあったが、涙は止まっていた。 『・・・大丈夫か?』 もう一度、問う。 そいつは大きく深呼吸をしてから、ゆっくり頷いた。 『起きれるか?・・・・服、着た方がいい』 目線は合わないが コクリと頷いたから 起こしてやろうと、肩の辺りに手を添えると ビクッと体が強ばった。 顔がみるみる青ざめ、また震え出す。 『あ、わりぃ。・・・服、ここに置くから。 着たら教えてくれ』 そう言って、少し離れた。 それから・・ 10分は経っただろうか・・・ 『あ・・・の、・・・着ました・・・・・』 小さな声がして振り向くと、そいつは、こっちに向かって歩いてきておずおずと、俺のスーツの上着を渡してきた。 顔に目立った傷はない。 けど・・・ スーツもシャツもボタンが無い・・・ いかにも何かありました! って感じに見えてしまう。 これで電車とか・・・・ねぇな 『お前、家 近い?』 聞くと、そいつはキョトンとして・・・それから、ハッとして・・・自分の体を抱くように手を回して、下を向いた。 『あの・・1人で・・帰れます・・・から・・』 『家、近い?って聞いてんの。 このまま別れたら俺が心配なんだよ』 『・・・・・・』 『送ってやる。つーか、送らせろ。』 『・・・・・・』 『俺は、お前を襲ったりしねーぞ?』 『!・・・・・・っ・・』 『信用できねー?』 その言葉に俯いたままだったそいつは 焦ったように、首を横に振った。 『なら、家 教えろ』 『・・・・・・・・はい・・』 ――聞けば、そいつの家は 意外にも俺の家の近くだった。 歩いて帰れなくもない距離だけど・・・こんなボロボロのヤツを歩かせる訳にはいかないだろう・・・とタクシーを拾う事にした。 駅の方に歩いて。 『あの・・・た、助けてくれて・・・ ありがとうござい・・・ました・・・・』 『いや、途中、見失ってな・・・。 遅くなって悪かったな』 『い、いえっ!そんなこと・・・。 他の誰も・・助けてなんてくれなかった・・から・・・ホントに助かりました・・』 まぁ、今のこの時代 人に構ってる余裕なんてないヤツが ほとんどだろうし 男が男を痴漢する、なんてーのもなぁ・・・ 世の中、腐ってんなー 『アイツら・・・・毎日毎日しつこくて・・・。 でも、まさか・・こんな事するなんて・・・』 『はあっ?毎日っ!? お前、毎日 痴漢かれてたのか!?』 『は・・・はい・・・・・・』 『は・・、・・・マジか・・・』 『・・・・・・はい・・・・・・』 信じらんねー 世の中・・・・腐ってるっ!

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