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新見さんと。☆3
店長は珍しく浮かない顔をして
大きなため息をついた。
『あー、しばらく来なくて
安泰だったのに・・・。クソが・・・』
『・・・そうなんですか?』
『アイツの・・ハルっつったか・・が、痴漢にあった時に、毎日毎日毎日毎日、俺んとこに来てよー。心配だ、どうしよう、不安だ、ハルが、ハルは、ハル、ハル、ハルって・・!』
そこで、体を震わせ、拳を握りしめ、
『うぜーわっっっ!!』
聞いた事のない大声で、叫んだ。
空気がビリビリ震え、
まさに・・獅子の咆哮・・・って感じ。
こんな店長・・・初めて見たぁ・・・。
なんというか・・迫力が凄すぎて・・
背筋がゾワゾワして・・・鳥肌がだって
体が勝手に 後ずさり、壁にぶつかった。
今の俺・・、まさに追いつめられた
草食動物って・・・・感じ?
やっぱ ただ者じゃない・・・。
『ま、まぁ・・・、えと・・・
今はうまくいったんだから・・
もう大丈夫なんじゃない・・ですかね・・?』
『・・・・・・・あ?』
まだ興奮の収まりきらない店長は
俺の言葉に 黒い炎のようなオーラをまとい
ギロリ・・・と睨んできた。
こ・・・、怖・・・っ!!
『うまくいったから、大丈夫・・・だと?』
『えっ・・・、は、いや・・ま、まぁ・・・・』
じりっと1歩、間を詰めてくる店長。
真っ黒なオーラがゴウゴウと渦巻く。
飲み込まれな勢いのそれに・・・思わず両手を顔の前でクロスして、防御体勢をとってしまう俺。
これは・・・、まさに・・・
ヘビに睨まれたカエルって・・・感じ?
怯える俺と目が合った途端、
店長はハッと我にかえり
はぁ――と、息をゆっくり吐き出した。
『てんちょ・・・?』
『クソ・・・、マジでめんどくせぇ・・・』
『・・・え?え・・・と、ごめんなさい・・』
『・・・・・・・てめぇじゃねーよ』
『・・・・え?』
『新見だよ・・・』
『新見さん・・・?』
『アイツ・・・今度は絶対、
毎日毎日のろけに来る・・・』
吐き捨てるように、心底 嫌そうに呟いた。
『・・・え、そ、そんな事・・・・』
『いーや。アイツはな、昔っから俺の嫌がる事をするのが大好きな ものすごく質の悪いクズなんだよ・・』
『・・・・・・・・・・』
それ・・・店長が 言います?
普段なら、俺の考えてることを即座に見抜いて、またまた暗黒オーラが出るところ・・・なんだけど、今の店長にその余裕はないらしい。
『あー・・・・・・、めんどくせー』
怒るどころか、フラフラとソファーに向かい、ドサッと座り込んでしまった。
おお・・・魂 抜けてる・・・
こんな店長も、初めて見るなぁ・・・
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