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第17話

「えっろ。侑史くん俺以外にそんな風に触っちゃだめだよ、俺はいつでもおっけーだけど」 「・・・い、いみわかんね・・・んっ」 もう一度深く口付けられて、それ以上何も言えなくなる。ゆっくり唇を離した逢坂の目が、その時少しだけ余裕を欠いて見えた。 「こっち、触るね」 逢坂は誰に断っているつもりなのか、一応そう言うと柴田のベルトに手をかけた。かちゃかちゃと薄闇にベルトが外される音が響いて、柴田は思わず目を瞑った。ジーパンと下着が実に手際よく脱がされる。それを見ながら自分はこんな経験は初めてだったけれど、逢坂は誰かをこんな風に脱がしたり触ったりしたことがあるのだろうなと柴田はぼんやり考えていた。 「侑史くん、ちゃんと気持ち良かったんだね。濡れてる」 そうして半分頭を持ち上げている柴田の性器を片手で包んで、逢坂は口元だけで笑った。さっきよりはっきりとした快楽が、柴田の背筋を這う。 「・・・っぁ」 「侑史くんいつもどうしてるの?どうされるのが好き?」 「・・・あ、ぁっ、や・・・っ」 「はは、フツーにこれが気持ちいい?」 わざといやらしい水音を立てて、逢坂は両手で柴田の性器を掴むと上下に抜いた。びりびりと足の指先まで痺れて、急速に的確に与えられる快楽に不安になる。逢坂が何か自分に聞いているようだということは分かったが、何を言っているのか分からない。柴田はそれに訳も分からず首を振った。 「やだ、あっ、んんっ」 「まぁいいや、これからふたりで色んな事試そうね」 「うぁ、あ、や、め・・・っ」 「苦しそう、イっていいよ」 根元にちゅっと音を立ててキスされて、そのまま先走りを裏側から丁寧に舐められる。信じられないくらいぞくぞくと急激に体温が上がった気がして、柴田は逢坂の背中に爪を立てた。逢坂の唇がきゅっと吸い付いたのが分かって、思わず柴田は目を閉じた。 「あっ・・・―――」 そして咥えた逢坂の口の中に、堪らず精を放っていた。茹だってどうにかなりそうな頭だったが、柴田はそれでもティッシュか何か、取ってやらねばと残った冷静な部分を酷使して思った。テーブルは遠い、そこまで起き上がって歩くだけの体力すらもうない。すると逢坂は柴田のそれから口を離して上半身を持ち上げると、柴田と目を合わせたままやや大袈裟な動作でごくりと喉を鳴らしてそれを飲み込んだ。柴田は思わず目を疑って、焦ってがばっと体を起こした。逢坂が音を立てずに笑って、口を開くとべろんと赤い舌を出した。口の中には何もない。柴田は焦って、逢坂の長い髪を引っ張った。 「いたっ!」 「や、め、ろ!おまえ、ほん、とに、きたない」 「汚くないよ、侑史くんはケッペキだなぁ」 言いながら逢坂は、手に残った柴田の精液を舐めた。 「好きな子の体液は何でも甘くておいしーよ、侑史くんもいつか俺の舐めてね」 「・・・―――」 「絶句しないで。傷つくでしょ」 眉尻を下げて逢坂がにこにこ笑う。それを見ているだけで失神しそうだった。 「み・・・みず、持ってきてやる・・・」 「いいよー、そんなの、それよりほら、うつ伏せになってなって」 顔はにこにことして無邪気な年下なのに、力だけはやたらと強い。ベッドから立ち上がろうとする柴田を片手でいなすと、逢坂はその体をくるりと反転させうつ伏せにさせた。 「・・・なぁ」 「だいじょうぶ、いきなり挿れたりしないから、そんな心配そうな顔しないで」 不安そうに眉を寄せる柴田の頬にキスをして、逢坂は自分の鞄の中からローションのボトルを取り出した。それを見ながら柴田は用意周到だと思ったけれど、もしかしたら彼は食事に誘ったところから、こうなることは予測済みだったのかもしれない、いやもしかしたら自分が食事に誘うところから予測済みだったのかもしれない。ぞくっと背筋に悪寒が走って、柴田はぎゅっとシーツを握った。 「女の子としかヤッてないんだったら、ここは流石に触んないよね」 逢坂が慣れた所作でローションを手の上に広げ、それを柴田の後ろ孔に沿わせた。ローションが冷たくてびくりと足が跳ねる。 「最初変な感じするかもしれないけど、慣れたら気持ち良くなるから」 「・・・はぁ」 「侑史くん処女だからいっぱい可愛がってあげるね」 「処女って言い方、やめろ」 ふふっと逢坂が口元だけで笑い、それにはもう何も言い返してこなかった。孔の周りをローションの滑りを借りた指が撫でている。ややあって、それが中に入って来たのが分かった。異物が急に侵入してきて、体の方がそれを拒否して追い出そうとしているみたいだったが、逢坂の指はそんなことは全く関係ないと言いたげに、ずぶずぶと奥まで入ってくる。 「・・・どんな感じ?」 「わ、かんな・・・」 「苦しい?息吐いて、増やすね」 ぐっと腰が持ち上げられて、柴田はそれに抵抗する術がない。膝が僅かに震えながら、それでも下半身を懸命に支えている。逢坂の言うとおり息を吐いたが、そもそもどんなふうに呼吸をしていたのか、柴田は分からなくなってしまった。ふと怖くなって逢坂を呼ぼうと思ったけれど、どんな風に呼んでいたのか分からない。それにこんな状況に陥れている逢坂の名前を、まるで助けを呼ぶみたいに呼ぶのは癪だった。柴田はシーツを掴んで、他に掴むものがなかったので目の前にあるそれだけを掴んで、顔半分を良く知っているはずのベッドに押し付けて、言われた通りもう一度息を吐こうとした。 「う、あっ・・・」 「流石にきっついね、大丈夫?侑史くん」 「や、だ・・・ぬ、けよ・・・っ」 「もうちょい我慢して、ゆっくりやるから」 頬にもう一度キスをして逢坂が自棄に優しい声色で言う。

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