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第19話
不恰好に持ち上げられた左足のせいで、逢坂のところからは繋がっているところが丸見えだった。柴田は俯瞰で自身を眺めるいつもの能力を、流石にもう欠いている。根元まで咥えこんでいるそこからゆっくり抜いてやると、柴田が肩を震わせて必死で息をするのが見えた。
「あっ」
短く柴田が声を上げて、逢坂はぴたりと動きを止めた。
「どうしたの、侑史くん」
「・・・な、んでも、うごけ、よ」
「ふーん・・・」
口元に笑いを携えたまま、逢坂は言われるままにまたゆっくり腰を動かす。柴田が奥歯を噛んでいるのが、逢坂のところからは良く見えた。何でも我慢する人だと思った。怒鳴る割には少し痛かったり焦らされたりする方が好きなのかもしれないと勝手に推測を働かせる。ほとんど抜かずにそのままもう一度突くと、思った通りに柴田の体が面白いほど良く跳ねた。
「うぁっ、あっ」
「ここ」
「あっ、や、やめっ」
「侑史くんの、いいとこ、見つけちゃった」
ふっと逢坂が笑って、その額からぽたりと雫が柴田の腹の上に落ちる。何故そんなところがこんなにも快楽と直結しているのか分からない。見上げると薄闇に逢坂のにやにやした顔が見える。それを逢坂に尋ねるわけにはいかなかったが、他の誰に尋ねたらいいのか分からない。
「ここ」
「あ、んっ・・・そこ、ばっか、や・・・っ」
「ぶっとぶくらい、気持ちいでしょ」
「あ、やめっ・・・そこ、んんっ」
逢坂が執拗にそこばかり擦るので、柴田はそれから逃れる術が分からずに、ただぎゅっとシーツを握った。今まで感じたことがないくらいの快楽が押し寄せてきて、それに押し流されて逢坂の言うとおり、可笑しくなってしまいそうだった。逢坂が動くのに合わせて、柴田の性器を片手で抜いた。先程精を放ったばかりのそれは、いつの間にか勃ち上がって、また与えられる快楽に震えている。
「侑史くん、感じてるカオ、すっごいえろくて、かわいいよ」
「・・・うるさ・・・っあ、うぁっ」
ぺろりと逢坂が唇を舐める。その下が自棄に赤く見えた。その軽口に反論する余裕すら、もうない。
「イきそ?・・・いいよ、出して」
「や、だ・・・ぁ・・・っ」
自分ばかりいいように扱われている気がする。思ったけれど柴田にはどうすることも出来ない。逢坂が強く柴田の中を擦って、腰が勝手に跳ねて、簡単にまた白濁を吐き出していた。
「はぁ・・・ぁ・・・っ」
薄闇の中で何故か酷く逢坂は優しい顔をしていた。意地悪く囁き、執拗に辱められた相手とは思えないほど、それは穏やかな顔だった。
「大丈夫、侑史くん」
「・・・あぁ」
今の状態が自分にとって大丈夫なのかどうか、判別はつかなかったが柴田はとりあえずそう返事をした。額に手をやると酷く汗をかいているのが分かる。
「気持ち良かった?」
「・・・―――」
当然みたいに逢坂は聞いたが、それに答えるのは癪だったので柴田は聞こえていないふりをして、逢坂から視線を反らせて息を整えていた。
「次は俺のことも良くしてね、侑史くん」
逢坂は笑って言うと、また左足を持ち上げて、ちゅっとその白い太ももにキスをした。柴田の足が震える。
「え・・・え?」
「俺、まだイってないから、侑史くんもうちょっと付き合って」
「あっ・・・ぁ」
言うなり逢坂がまた腰を緩やかに動かし始める。先程の余韻がまだ体中に残っている。それをやや乱暴に引きずり出されて、柴田は焦った。
「あっ、や、もう、いいっ」
「そんな、こと言って」
「やめっ、あっ、そこ・・・あんん」
「イイ、くせに」
ふっと逢坂が笑う。足が急に離されて、ぐっと奥まで突かれる。呼吸が急に苦しくなって、柴田は思わず逢坂の肩を掴んでいた。
「や、あっ」
「ん、はは」
ぽたり、また逢坂の額から汗が降ってくる。俯いたまま逢坂は笑って、そのままぐっと体を折って、柴田の唇にキスをした。すぐに離れて、また角度を変えて唇が塞がれる。柴田はできるだけ酸素を取り込みたかったけれど、逢坂がそれを邪魔して上手くいかない。
「はぁっ、ん、ふ、ァっ」
「・・・ゆうしくん」
見上げる、そこで逢坂はまだ笑っていたけれど、眉間に皺が寄っていて、また幾分か余裕を欠いている。
「そうやって、ちゃんと」
「あっ、は、ぁ」
「つかんで、て」
「あっ・・・―――」
激しく揺さぶられて、逢坂の声が一体何を言っているのか、柴田にはよく分からなかった。夢中で掴んだ逢坂の体が熱くて熱くて、堪らなくてまた、一層爪を立てた。
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