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夢の再現
瑠璃の桜の花弁はその名の通り薄青く透明な見た事もない物だった。光を浴びて風に揺れる姿は圧巻だ。ルナは桜にぴったりと抱きつくと
「昨日はありがとう……一気に満開なんてツラくない? 本当? ムリしないでね? 絶対だよ? 深海 ! 紹介するね! 瑠璃の桜だよ。で、こちらが俺の伴侶殿だよ。よろしくね?」
「おはようございます。よろしくお願いします。咲いてくれてありがとうございます。疲れたら休んでください」
そう言うと当てた掌から微かな振動が伝わった。
「咲きます。まだまだ咲き続けます……和子 様が私の我儘を聞いてくださって、深く深く眠らせていただきました。だから大丈夫です! お二人の為に、郷の為に咲きます!」
思わずルナを見ると、とても優しい表情で桜の木の幹に頬を当てて俺を見ていた。
「今の……」
「聞こえた?」
「聞こえた!」
すごいね、と笑うルナと手を繋ぎ、集まっている人達の輪に加わった。
あっという間に取り囲まれて、口々に昨日のお礼を言われて、正直返答に困ってしまう。
あれは麒麟 の意志と力で、俺の物じゃないんだけど……。
戸惑う俺の手をきゅっと握り、人垣から抜け出して
「昨日深海が来てくれたから間に合ったんだよ? あと数日遅れていたら、郷は滅んだかも知れない。俺は滅ばないでって願うしかなかったから……本当に深刻だったんだ。でも深海が来てくれて郷は生き返った。だからみんな喜んでる」
だから笑って、とルナが言う。
それはかなり痛かった。俺は……。
「郷の救世主になりに来たんじゃない。俺は朱雀達からルナの事を聞いてさ、とにかく会いたい。会って連れ出して……ってそこまでしか考えてなかった。だから……」
「うん……それで充分だよ。俺も深海に会いたかった。だから、来てくれてありがと! みんな! 聞いて!」
ルナが力を込めて集まった人達全員に声が届くようにした。
「今日から俺が郷の全てを背負うよ。俺と、伴侶殿と、守護の四人とで郷を見守るから、みんなも俺達を助けて欲しい。それでね、この帝宅 と帝が管理していたこの庭、みんなに解放しようと思う。こんなに美しいんだから、一部の人にしか見せないなんてもったいないでしょ? だから今、帝宅を改装して休憩所にしようかって思ってるんだけど、みんなはどう思う? 他は何も変わらない。今まで通り。どうかな?」
郷のほぼ中央にだだっ広く広がる帝の管理地を解放するという事は、わざわざそこを迂回して通らなくても良くなるという事で、とても便利になるはずだと四人とも言っていた。
そしてそこに休憩所を作れば、人の流れももっと活発になって、色んな話も聞けるだろう、と。
「そういう計画があるって事をまずは知っておいて! それで明日でも良いし明後日でも良い。いつでも良いからみんなの意見を聞かせて? じゃあ、今日はみんなお腹いっぱい食べて! 俺からのお話、終わり!」
話をしている間も繋いだままの手をルナがくいっと引いて、ずんずんと進む。
「ご飯を食べたら早く館に帰ろう? あとの事は四人にお任せしちゃお? ここじゃ深海を独占できないもん」
とルナが頬を膨らませているこの瞬間にも、郷の人達が挨拶に来てくれる。ルナは頬を引っ込めて、丁寧に話を聞いて、最後には必ず俺の事を伴侶だからね、と紹介してくれた。
受け入れてもらえるのは嬉しいけど、いかんせん人が多過ぎる。こんなに人に囲まれた事のない俺は早々にいっぱいいっぱいになってしまった。
人の顔と名前、一致しない……。そんな一気に覚えられない……。
「皆さん? 伴侶殿は昨日こちらへ来たばかりですよ? そろそろ許してあげてくださいね?」
気配りの人・白虎がどこからともなく現れて、そっと俺とルナの肩を抱いて集まった人達から少し距離をとってくれた。
「白虎! ありがとう。助かった! もう頭の中人の顔でいっぱいでぐらぐらするよ〜」
「じゃあ和子の顔だけ見て頭の中をスッキリさせてください。お食事はあとで紅蘭殿に持って帰っていただきますね? それで良いですか? 和子?」
「文句ないよっ! ありがと白虎!」
「だって、和子……早く深海さんと二人になりたいーって顔に書いてありますよ?」
くすっと笑って白虎は人差し指でルナの頬をちょこんと突いた。
「あわわっバレてる!?」
「はい。バレてます、私には。さ、また人が集まる前に早くお帰りなさい。上手くごまかしますから」
白虎に背中を押され、こっそりと雑木林へと入る。
近道を歩きながらルナの話を聞く。俺もルナに朱雀達と出会ってからの事を話す。全てを捨てる覚悟だったのに、じいちゃんとばあちゃんの事は嬉しい誤算だったと話すと、ルナは足を止めて抱きついて来た。
「お正月、行こうね! ご挨拶しなきゃ」
「二人ともびっくりすると思う! こんな別嬪さん連れて行ったら大喜びで腰抜かすかも!」
「別嬪さんじゃないけど……喜んでもらえたら嬉しい。深海の事、奪っちゃったから、許してもらいたい」
マジメな声音のルナをしっかり抱き寄せた。
「郷に来る途中、じいちゃんとばあちゃんの声が聞こえたんだ。がんばれよって。幸せになれよって。奪われたなんて思ってないよ。応援してくれてる」
不安の色を浮かべている金眼のすぐ下に安心させるようにキスを一つ。
額を合わせれば、少しばかり不安の消えた金眼が真っ直ぐに俺を見つめて瞬きを繰り返す。
「ルナ、帰ろう」
「うん……深海、あの、きすしよ?」
「だーめ。帰ってから」
「えーっ! しようよ! まだしてないよぉ!」
「デコにした。今もした」
手を引いて歩き出すと、一瞬出遅れたルナが早足で着いてくる。歩きにくさを気にもせず、腕にしがみついて両足を棒のように伸ばした。
「ちょ、ルナ危ないって!」
「深海が悪い。きすしてくれない深海が悪い!」
ズルズル引きずられながらのルナの抗議が続く。
チラリと横を見れば、上目遣いで少し眉を下げて、全身全霊のお願い! を発動しているルナがいて。
結局負ける。負けて、抱きしめてキスをする。
今度はちゃんと唇に。唇が重なる度に胸の奥が熱くなって、俺とルナ二人の想いが混ざり合う。
「今度こそ帰ろう」
「ん」
宴で人の出払った館はとても静かだった。
二人の想いは一つだった。俺の望みもルナの願いも同じ……。
「深海……会いたかった。大好き」
「俺も。会えればそれだけで良かった。なのに会ったら会ったで欲が止まらなくなる」
「は、恥ずかしいね……」
「……緊張する」
広いベッドの上で、中途半端にルナの着物を脱がせて、唇や首筋に幾つもキスを落としていく。
時々ルナはくすぐったそうに身をよじり、吐息を零した。
「ん、なんで緊張……?」
「えーと……」
きょとんと俺を見上げるルナには解るまい……ヤらずのハタチを越えた俺の緊張など。
「深海?」
「……あのな、わ、笑うなよ?」
「うん。ちゃんと聞きたい」
「俺は……今まで、誰ともこういう関係になった事がない。初めてなワケ。で……ちゃんと気持ち良くしてあげられるか……不安っつーか。痛い思いはさせたくないから、緊張するっつーか……」
「大丈夫だよ、深海。俺だって初めてだよ? だけど、恥ずかしいなって思うけど、怖くない。深海とやっと一つになれるって思ったら、すごく嬉しい!」
ふんわりと笑うルナは、きっとすごく幸せだよって笑って俺の手を引いた。
「そうだけど……もし俺だけイったら……もしめちゃくちゃ早かったらダセェだろ?」
「ださい? んー……なんで? 解んない。心も身体も求め合って果てが来るなら、それは普通の事でしょ? もし、もしって深海は難しい事を考え過ぎ!」
いきなり男前になったルナはさっさと俺の帯を解いて、俺を見つめる目は覚悟を決めてって言っているようだった。
そこまでされて、覚悟を決められない程ヘタレっていうのも情けなくてイヤだし。
ルナの言う、きっとすごく幸せだよって言葉を信じた。
きっと俺が不甲斐ない結果に終わってもルナは責めたりしないだろう。そう思うと心が軽くなって、負けじとルナの帯を解いた。
月の光に浮かぶルナの裸体は頭の中が沸騰しそうな程美しかった。
白い肌に赤い痕を残して、胸の突起に舌を這わせるとルナが甘い声を洩らした。
ゆっくり。ゆっくり。暴走しそうな自分に言い聞かせて、ルナの反応をできる限り見ながら肌を合わせる。
しっかり反応してくれているルナの半身を撫でると、鮮明に夢を思い出した。
「あ、あぁっ深海……」
ヒクリと震えて透明な雫を溢れされたソレを優しく掴んで上下させるとルナの身体がしなった。
同じ男の身体だって事に拒否感も嫌悪感も湧かず、ただルナに悦 くなって欲しかった。
「もうちょっと待って?」
こくんと頷いたのを確認して、脚の間に身体を入れて、迷わずルナの半身を咥えた。口の端から落ちる俺の唾液と混じり合ったルナの体液を指に絡めてルナの身体の中心に触れると、ルナが初めて俺にストップをかけた。
「あ、あの、そこ……引き出し……使いなさいって、もらった……」
切なそうな声で訴えるルナの視線の先の引き出しを開けると、ふわっと甘い香のする粘着質な液体が入っていた。
「これ……くれたの、白虎でしょ?」
「ううん、朱雀。初めての時は特に使えって、言われて……ああっ深海!? 何? お腹……ヘン……」
「少し我慢して? ふふっ……あの人はホント……」
少しずつ拡げるように指を動かして、萎えてしまったルナのモノをまた咥える。
再び硬さを取り戻しかけた時、ナカを探る指先に微かな突起が触れて、派手にルナの身体が跳ねた。
「っふぁ、あ、深海……深海……」
「ココ? 気持ち良い?」
「っん、ん……きもちい……あ、もヤダ……深海早く来て……」
俺の大好きな金眼に涙をいっぱいに溜めて、早くとねだるルナに理性が切れそうになるのを必死で抑えた。
指を増やして、時間をかけて拡げて。
俺の指三本を受け入れられるようになるまでにルナは耐え切れず俺の口に出した。
精液まで甘い気がするのは惚れた欲目か?
「あ! 深海が挿入 って来る!」
「っく、きつ……」
痛いくらいの締め付けにルナの身体が心配になる。
「みぃみ……きすしよ?」
一生懸命に手を伸ばしてくるルナに身体を伸ばして唇を重ねた。その無理のある体勢のせいでルナのナカを擦りあげ、根元まで挿入してしまった。
「っはぁ……一つだ、朔 」
「ふあぁ!? え? ほんと?」
「解る? 俺、今、朔のナカにいる。痛くない?」
「う、えへへ……解る……お腹ん中ドキドキしてる……嬉しい」
幸せ! とキツく抱きついてきたルナを抱き返して、これでもかってくらいにキスをした。
ルナの小さな舌が俺を求めて音を立てながら咥内を暴れるのにたまらなく興奮した。
俺が動かなくても俺を締め付けて快感をくれるルナのナカで、少し腰を引くとしびれるような快感が全身に広がった。
「ぁ……みぃみ……すごい……嬉しい……やっとほんとになったね……」
「なったな……やっと」
「んっんっあ、みぃみ……大好き……」
ゆっくりとと言い聞かせていたはずなのに、いつの間にかスムーズになった動きが絶頂を目指すものに変わっていた。
ルナと指を絡めて、キスをして目の前が真っ白になっていく。
ルナのを扱きながらもぞわりぞわりと這い上がって来る抑えきれない快感に負けないうちに、ルナの耳元に口をつけて、絶対に知っておいてもらわないと困る事を囁いた。
「愛してるよ、朔」
「んっやぁ! みぃみっ!」
ルナの首筋に唇を寄せて、可能な限り奥へと欲を吐く。息を詰めた身体をルナが優しく抱きしめてくれて、鼻の奥がツンとした。
腕の中、熱い身体を震わせて、すんっと鼻をすするルナが愛おしい。
必死過ぎて気付けなかったけど、ルナの腹にも精液が散っていて、ちゃんとイけたんだとほっとした。
「夢の中でも、教えてくれてたろ?」
「へ?」
「名前。呼んでって。ホントの名前……あの時は聞き取れなかったけど、ちゃんと教えてくれてたんだな、朔」
「……そかな? そうなのかな? 夢だもん……解んないよ……」
困り顔ですり寄って来たルナを抱きしめて、髪に指を通す。胸に頬を寄せて、くふふと笑いながら照れているルナが欠伸をして、片腕を腰に回した。
「幸せ……ありがと、深海……ずっと……いっしょ……」
「うん。一緒……ずうっとね」
「……ん……嬉しぃ……」
頭のてっぺんから爪先まで、胸の奥の奥の方まで……俺を造る一欠片の細胞や血の一滴まで満たされて、うつらうつらし始めたルナの身体をぎゅっと抱きしめて目を閉じた。
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