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第一章・3
ボディガードの征生は、部屋を出ていった。
後は、大翔の勉強が終わるまで、廊下に控えているはずだ。
(先生と、勉強中はずっと二人きり……)
そう考えると、大翔の頭はどんどんのぼせていく。
「じゃあ、大翔くん。一番最近のテスト、見せてくれる?」
「え!? あ、うん」
一週間前に返って来たばかりの、実力テストの答案。
大翔は、それを自信満々で見せた。
なにせ、5科目中3科目は赤点。
ほかの2科目も、赤点すれすれだったのだ。
どうだ! 俺は、頭が悪いだろう! という自信である。
だが楓は、ひとつうなずくと、笑顔で大翔にこう言った。
「うん、悪くないね。大翔くんは、勉強すればどんどん伸びるよ」
「へ?」
こんなことを言われたのは、初めてだ!
「基礎になる公式や文法をしっかり覚えて、問題のパターンを身につければ大丈夫」
「俺、その公式や文法を覚えるのが、超苦手なんだけど~」
「一緒に、がんばろう。ね?」
そう楓に言われると、なぜか出来る気になってしまう。
後はもう、勧められるままテキストを広げ、勉強を始めてしまう大翔だった。
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