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第一章・6
大翔のものを愛しながら楓の頭にあったのは、征生の姿だった。
『大翔さんがヤクザの息子と言うだけで、他の人間もみんな断って行きました。もう頼れるのは、先生しかおりません。どうか、どうかお願いします!』
そう言って、土下座までした彼の姿。
きっとこの子は、彼にとって大切な存在なのだろう。
(だったら僕も、大翔くんを大切にして見せる)
そんな覚悟でフェラまでやってのけ、首を上げて見たのは大翔の呆けた顔だった。
「大翔くん?」
「え? あ、あの。巧かったよ、すっげぇ悦かった」
そこに居るのは、普通の高校生の少年だ。
髪を金色にして耳にピアスを飾り、ワルぶっている大翔の心根を、楓は見た気がした。
(ホントは明るい、優しい子なのかもしれないな)
「じゃあ、今度は明後日に来るから。宿題、ちゃんとやっておいてね」
「は~い」
楓が部屋を出て行った後、二人分の足音が廊下を去って行った。
征生は、きっと先生を送って行くのだろう。
「……くぅッ!」
一度縮んだ後、大翔は大きく体を広げた。
足踏みし、跳ね、大声を出した。
「最高! 先生、サイコー!」
無性に体が疼いている。
大翔の初恋が、始まった。
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