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第五章・2

 大翔に、友人はいない。  金髪でピアス、という姿から、普通の生徒はまず寄ってこない。  ワルな連中は、本城組の一人息子という肩書を恐れて、手出しをして来ない。  大翔は、学校では孤独だった。 (ま、いいや。今夜、楓先生に教えてもらうから)  生徒たちが教師のもとへ並び始めた。 「よし、できたな」 「これは間違い。もう一回、やり直し」  そんな担任の声を遠くに聞きながらあくびをしていると、窓際の隅に小さく固まったまま動かない少年を見つけた。  クラスで一番冴えない男子、永光 聖也(ながみつ せいや)だ。  背は低く痩せ型で、陰キャ。  成績が振るわないのは、大翔と同じ。  熾烈な最下位争いをしていた二人だが、今の大翔には楓という強い味方が付いている。  たちまちのうちに差が開き、聖也は何をやってもダメ、の烙印を押されてしまった。  友達のいない聖也は、間違いだらけの答案を前に、手も足も出なかった。

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