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第五章・3
友達がいない人間は、間違いを正そうとしてもできない。
そんな生徒がこのクラスにいることを、担任は承知しているはずだ。
(先公のヤツ、やっぱドS!)
そして、ついて来られない人間は、置き去りにされる。
(楓先生なら、どうすっかな)
おそらく楓なら、この気の毒な少年に声をかけ、一緒に問題を解いてあげるだろう。
『大翔くん!』
楓の声が、聞こえたような気がした。
背中を押されたような気がした。
大翔は立ち上がると、しょぼくれている聖也の席へ歩いて行った。
「25点。最低点だな! チーン」
「ほ、本城くん」
「俺さ、今回第一志望A判定だったぜ」
「そう。いいな、おめでとう」
この問題、俺は正解だった、と大翔は胸を張った。
「数学なんて、公式とか定理覚えて、出題パターンをやり込めば楽勝だぜ!」
「すごいね、本城くん」
「つまり、この問1はだな……」
楓の受け売りで、大翔は聖也に回答を導いた。
自分も間違えている問題だけは、どうしようもなかったが。
とにもかくにも、聖也はなんとか担任に解答用紙を見せられるところまでこぎつけた。
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