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第五章・4

「はは~ん。俺って、友達思いの良い奴~」  そんな軽口を叩きながら、大翔は弁当を広げていた。  すでに終業のチャイムは鳴った。  まだ担任の周りには生徒が数名いたが、大翔はお構いなしに大好きな卵焼きをぱくりと口にした。 「本城くん、さっきはありがとう」  見ると、聖也が大翔の席まで来ている。 「いいよ、別に」 「あの、これ、お礼」 「お礼?」  聖也は大翔に『北海道ミルクのクリームパン』を、差し出した。 「お前、これ!」  このパンは、購買に一日10個しか入らない『幻のパン』として、絶大な人気を誇っているのだ。 「いいのかよ、こんな貴重品」 「僕、すごく嬉しかったんだ。ホントに、ありがとう」 「じゃ、遠慮なくいただいとくか」  この日、この出来事から、二人の間に友情が生まれた。  大翔の、高校生活3年目にして初めての友人だった。

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