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第七章・3
待ち合わせの時刻ちょうどに大翔は約束の場所に着いたが、聖也はすでに待っていた。
「待ってたのか? どれくらい?」
「5分くらいかな。本城くん、デートの時は早めに待ってた方がいいよ」
「解った。楓先生は、待たせないようにするぜ」
まずは二人でカフェに入って、デートプランを話し合った。
「今、お勧めの映画はこれだよ」
聖也は、名監督の創ったヒューマンドラマの作品を推した。
「アニメじゃねえのかよ」
「う~ん。大人の恋人にアニメはちょっと……」
そういえば。
(俺、楓先生の趣味とか、全然知らねえ)
それは大翔にとって、少なからずショックだった。
今まで恋人気取りで身体を重ねてきたが、どんな映画が好きか、など全く知らないのだ。
「こっちのチラシには、今上映中の作品が全部載ってるから、ここから好きなの選んでもらうのもいいかも」
「お、おう」
「映画を観たら、ランチだよね。洋食と和食、どっちがいいかなぁ?」
まただ。
(楓先生、どっちが好きなんだ?)
知らないことだらけだ。
「間を取って中華、とかどうだ?」
「それもいいかも」
屈託なく笑う聖也が、やけに頼もしく見えた。
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