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第七章・5

 映画の後は飲茶でくつろぎ、さあ、それから。 「ホテルだな、やっぱ!」 「ダメだよ、本城くん!」  せっかくのデートだから、ロマンチックに行こうよ、と聖也は提案した。 「美術館とか、プラネタリウムはどう?」 「げぇ。俺、眠くなりそう」 「じゃあ、水族館は? イルカショーとか楽しいよ」 「いいな、それ。よし、行くぞ!」  残念ながらイルカショーは2時間後のイベントだったので、この日は諦めた。  だが、水中を優雅に泳ぐ魚の群れを見ていると、大翔の心は潤った。 「イルカショーの開催時刻をこれでチェックできたから、楓先生とのデートの時はちゃんと観てね」 「おう」  ゆったりとした心地で水槽の前を歩いていると、突然聖也が手を握ってきた。 「おう!?」 「こうして二人でお魚見ながら、自然と手をつなぐといいよ」 「お、おう……」  なんか聖也のヤツ、先生みたいだな。  解らないことを、優しく教えてくれる楓先生。  聖也もまた、大翔を放り出さずに導いてくれる。 「聖也は、俺の二番目の先生だな」 「光栄だよ」  握った手をほどきもせず、大翔は聖也と水族館を静かに歩いた。  

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