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第八章・2
「俺さ、昨日初めて先生とキスしたぜ」
「え? キスしたことないのに、エッチはしてたの?」
「キスって、いいよな~♡」
「変わってるね、本城くんって」
聖也はホットチョコレートをマドラーでかき混ぜながら、しみじみと言った。
「な、俺たちもキスしてみようぜ」
「俺たち、って。本城くんと、僕!?」
うん、と大翔はうなずいた。
「俺、もっとキスとかセックスとか、巧くなりたいんだ。楓先生を、悦ばせたいんだ」
「僕は、その練習台かぁ」
頼む、と拝み倒され、聖也は5分後には彼と共にホテルへ向かっていた。
(僕の気持ちに、本城くんはいつか気づいてくれるのかな)
それを思うと、切ない聖也だ。
キスの味も、ほろ苦い。
おまけに、指導も入れないといけないのだ。
「本城くん、そんなに舌でべろべろ舐めなくてもいいから! ゆっくりでいいから!」
「お、おう」
それでも二人で抱き合って、穏やかなキスができる頃になると聖也の心も慰められた。
練習台でも、本城くんとこうしてキスできるだけで幸せ。
そんな謙虚な聖也だった。
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