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第八章・7

 楓の名が出てきて、聖也は現実に引き戻された。  僕は、先生の練習台。  それを忘れちゃ、ダメだ。  だけど、もう僕、本城くんに溺れちゃってるかも。 「本城くん、エッチが終わったら、しばらく二人でお喋りとかするといいよ」 「そうなのか?」 「ピロートーク。愛を深めるには、効果的だよ」 「そうかぁ。んじゃ、聖也、お前は進路とかどうするんだ?」 「もうすぐ12月だもんね。僕の成績じゃ、進学は無理かなぁ」 「諦めんなよ。受験は実力と運だ、って楓先生も言ってたぞ」 「運、かぁ」  もう、運は使い果たしたかもしれない、と聖也は感じていた。  本城くんと、こんなに素敵なひとときを過ごせるなんて。 「そう言えば、本城くんは楓先生とデートできたの?」 「……」 「本城くん?」  健やかに眠っている大翔に、聖也は微笑みながら毛布を掛けてやった。

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