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第九章・2

「二人で、何してるんだろうな」 「それはやっぱり、食事だよ。レストランなんだから」 「そうじゃなくって! デート、かよ!?」  あ、と聖也は円く開いた口を手で押さえた。  レストランに入る二人は、ずいぶん親密に見えた。  そう、恋人同士のように。 「聖也、この後どうなると思う?」 「言いたくないけど、聞く?」 「じゃあ、聞かねえ」  一時間ほど寒さに震えながらレストランを見張っていると、ようやく二人は出てきた。  ゆっくりと歩きながら、楽しそうに何か話している。 「ちくしょう。何喋ってんだろ」  俺と話すことは、テストや成績、大学のことばかりなのに!  そして二人は、一流ホテルに入っていった。 「そんな……。楓先生が、難波と……」 「本城くん、気をしっかり持って! ラウンジでお酒飲むだけかもしれないし!」  聖也が気休めを言って励ましてくれたが、大翔はその場にしゃがみ込んでしまった。 (そういえば前に、楓先生は難波とお似合い、なんて考えちまったこと、あったっけ)  まさかそれが、現実のものとなろうとは。

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