63 / 99
第九章・2
「二人で、何してるんだろうな」
「それはやっぱり、食事だよ。レストランなんだから」
「そうじゃなくって! デート、かよ!?」
あ、と聖也は円く開いた口を手で押さえた。
レストランに入る二人は、ずいぶん親密に見えた。
そう、恋人同士のように。
「聖也、この後どうなると思う?」
「言いたくないけど、聞く?」
「じゃあ、聞かねえ」
一時間ほど寒さに震えながらレストランを見張っていると、ようやく二人は出てきた。
ゆっくりと歩きながら、楽しそうに何か話している。
「ちくしょう。何喋ってんだろ」
俺と話すことは、テストや成績、大学のことばかりなのに!
そして二人は、一流ホテルに入っていった。
「そんな……。楓先生が、難波と……」
「本城くん、気をしっかり持って! ラウンジでお酒飲むだけかもしれないし!」
聖也が気休めを言って励ましてくれたが、大翔はその場にしゃがみ込んでしまった。
(そういえば前に、楓先生は難波とお似合い、なんて考えちまったこと、あったっけ)
まさかそれが、現実のものとなろうとは。
ともだちにシェアしよう!