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第九章・4
「楓先生、お願いがあるんだけどさ」
「何かな?」
テキストを閉じ、大翔は目を逸らしたまま言った。
「もし俺が合格したら、ご褒美にデートしてくれないかな」
楓は、驚いた。
このところ、全く関係を求めて来ない大翔。
お別れのキスだけが、やたらと巧くなってゆく大翔。
どういう心境の変化かと、楓は心配になった。
「大翔くん、最近体の調子はどう? 具合の悪いところでも、ある?」
「ねえよ。俺は健康優良不良少年だぜ?」
「だって最近、全然エッチしないし」
「して欲しい? 楓先生♡」
「え!? いや、そういうことじゃなくって!」
(先生、ホントに俺のこと心配してくれてるんだな)
そう考えた大翔は、隠し玉を早々に出してしまうことにした。
「俺さ、見ちゃったんだ。先生と難波がホテルに入ってくところ」
楓は、息を呑んだ。
いつだろう。
まさか、大翔くんに見られてたなんて!
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