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第九章・5
「先生、難波のこと、好き?」
「……うん」
「困るよな。俺、先生も難波のことも、好きだからさ」
楓が征生と結ばれるのは、結構なことだ。
だが、一方で大好きな先生を奪われるのは、苦しい。
「ごめんね、大翔くん。受験前の大事な時期に、心の乱れるようなことを」
「いや、それはカンケーない。楓先生に勉強教わってるだけで、俺はハッピーだから」
やけに大人びた表情の大翔が、そこに居た。
出会ってすぐに、フェラチオを強要してきた少年とは大違いだ。
「楓先生、この後は難波の車でマンションに帰るんだろ?」
「え、うん」
「……やっぱ、妬けるな」
それだけで、大翔は楓と別れた。
今夜は、キスも無しだ。
「それだけ、大翔くんを傷つけたんだ」
楓は、車内で下を向いていた。
ずっとずっと、うつむいていた。
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