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第十章・4

「先生、親父なんて言ってた?」 「え、あ、うん。ありがとうございます、って」  ふふん、と大翔は鼻を鳴らした。 「もう合格間違いなし! だからな!」 「油断大敵だよ、大翔くん」  その日は気分が昂っていたのか、大翔は楓にキスをねだってきた。  舌を絡ませ濃厚な……、を予想していたにもかかわらず、唇を合わせるだけのライトなキス。  ただ、時間が長かった。  楓の存在を確かめるような、そんなキスだった。  組長の言葉を気にしていたのは、大翔だけではなかった。  征生もまた、楓のマンションで同じように訊いてきた。 「大翔くんのこと、ありがとうございます、だって」  そしてまた、楓も同じような嘘をついた。  征生のキスは、ディープだった。  舌を絡め、軽く食み、吸ってくる。  そこまでで、楓は床に膝をついてしまった。 「はぁ、はぁ……。もう、ダメ……」 「キスでのぼせるなんて、相変わらずウブだな」  そのウブなはずの楓が、手早く征生の前をはだけてペニスを掴み出している。  ちゅぷ、と楓は征生を咥えた。

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