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第十章・8

 デスクの椅子にもたれ、大翔はぼんやり宙を見ていた。 「今頃、楓先生と難波、エッチしてんだろーなー」  自然と、スマホに手が伸びる。 「もしもーし。聖也? 今、ヒマ?」 『いいよ。今夜は、何?』 「多分さぁ、難波のヤツ、楓先生と今エッチしてんだよな~」 『またその話? 早く楓先生のこと、デートに誘えばいいのに』 「でも、合格決まったら、って言っちゃったからな」 『律儀だね、本城くんは』  そして、そんな大翔を聖也は好きだった。  愚痴でも構わない。  彼の声が聞けるだけでも、嬉しかった。 「あ~あ。こんなこと言えるの、聖也だけ。俺って友達少なすぎ!」 『別に、無理して友達作る必要ないよ。僕で済むなら、何でも言ってよ』 「あ、そうだ。聖也はテストどうだった? 手ごたえあったのか?」 『合格ラインぎりぎりだよ。あとは運だね』 「そっか。俺、神様にお願いしといてやるよ。聖也も受かるように」 『ありがとう』  大翔には、新しく聖也という拠り所ができていた。

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