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第十二章・3
「もしもし~、聖也? 今、ヒマ?」
『どうしたの、本城くん。声が暗いよ』
大翔は、事の次第を聖也に打ち明けた。
「てなわけで、楓先生とのデート夢と消えたぜ……」
『ダメだよ、夢にしちゃ! あれだけ頑張ったのに! 本城くん、先生のこと大好きだったのに!』
「だけどよ~、先生は難波と愛し合っちゃってるんだぜぇ? それを……」
『一日くらい、いいじゃないか!』
おいおい、と大翔はスマホを左手に持ち替えた。
「泣いてんのか? 何でお前が泣くんだよ」
『僕、僕だって。好きなんだもん、本城くんのこと。だのに、本城くん可哀想すぎるよ』
「え……?」
『あ……!』
聖也のヤツ、俺のこと好きだったのか。
だからあんなに、身を粉にするようにしながらでも付き合ってくれたのか。
「あ、いや。ごめん。ありがと、な」
『僕の方こそ、ごめん。好きになっちゃったりして』
「返事、ちょい待ってくれ。また電話するから」
『うん……』
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